ネクスト経済研究所|国内外の経済・政治・社会の方向性を洞察

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米中貿易戦争の行方

2018.05.23 09:32

米国が通商拡大法232条に基づき中国など対象国に対し 鉄鋼、アルミにそれぞれ25%、10%の高率関税をかけた。 さらに通商法301条に基づき知的財産に関する1300品目に ついても報復課税を行う見込みとなっている。 これに対して中国は対抗措置として報復関税を課す ことを打ち出しており、いよいよ米中は貿易摩擦から貿易戦争へ。 現状米中間ではこれを回避する対話が水面下で行われて いるようでもあり、またトランプの得意のブラフとの見方もあるが 実際のところ軟着陸は難しいのではないか。

 

もともと中国の石油、航空、金融など基幹産業はゾンビと言われ る国有企業が補助金を受けては生き延びて過剰生産を続けてきた。 現状国内経済が減速し、これらの生産財の国内消費は不可能となっており、海外での消費にドライブをかけている状況だ。 したがって一帯一路は格好の受け皿であり、くわえて米国へも大量の過剰生産物が流れており、米国において(トランプのいうところの)「世界史上で 最大の赤字」を産み、米国の企業を直撃しているのだ。このような報復関税の応酬が進むとそれぞれの輸入財の価格上昇に伴い 経済の減速から逃れられなくなり、貿易・世界経済の縮小、景気後退 がもたらされることになる。

 

このような貿易戦争の影響は直接間接に日本に強く及ぶ見込みだ。すでに日本では貿易戦争への懸念と円高の影響を受けて雇用市場も変調を来し、景況感の急速な悪化が顕著となってきた。それでは日本は景気後退に備えて打つべき手があるか?と言えば財政政策はすでに累積赤字が高い状況でその出動は無理。また金融政策もすでに緩和はこれまで一杯一杯で、もはや円高を抑えるべく 口先介入しかないのが実情だ。 ということで米国のジャパンパッシングを翻意させるべく4月17日の日米首脳会談に活路を求めているが、近頃の米国のスタンスは昨年来の晋三・ドナルドの 蜜月関係などまるでなかったかの様子。「外交」とは手を握り・見つめあうという恋人関係の延長線上にあるわけはないということだ。

(改革開放40年)

このところ米国の株価は日替わりメニューのように強気と弱気が交錯し、激しくアップダウンを繰り返している。とくに先週は米中貿易戦争の先行きに安心感が強まって上昇したが、週末には中国の報復に対してトランプ大統領が1千憶ドルの追加関税を検討するようにUSTRに指示をしたことから不安感が再び高まった。しばらくはこのようなやりとりが続くことになりそうで、予断を許さない。

実際米国では11月に中間選挙が予定されておりトランプ大統領も「中国製品に45%の関税を課す」との大統領選での公約を果たすことにこだわる。またその政権の陣容も、クドローNEC委員長、ボルトン安保担当補佐官ポンぺオ国務長官らがライトハィザーUSTR代表、ナバロ通商製造局長に加わって、対中強硬派および保護主義派の鉄壁の布陣となった。制裁発動までの猶予期間にムニューシン財務長官らが北京に入り対話を本格化させるともみられるがどのようになるのか不明。脅しだけのつもりが本当の喧嘩になったりすることはよくあるもので一寸先は闇だ。そして迎え撃つ中国は鄧小平が改革開放政策へと舵を切り高度成長を実現させて40年の節目。つまり中国は貿易のメリットは十分承知しておりトランプ主導の保護主義には随時反論してきた。とはいえ今回の報復合戦については売られた喧嘩は買うと言った趣旨を述べているし今後予断を許さない。3月の全人代では共産党の常務委員を退職した王岐山がよもやの国家副主席として中国の実質NO2となった。対米交渉でのその神通力に期待はかかるものの、「暗愚の帝王」トランプ相手では勝手も違うだろう。今後の米中の行方についてあまり楽観に傾いてしまうのは危険ということだ。

(劉鶴)

「米国第一」「保護主義」の道を突っ走る米・トランプ政権に対し、昨年のダボス会議以来自由貿易の旗頭となったのが中国の習近平国家主席だ。10日には海南省の国際経済会議「ボアオ・アジアフォーラム」で金融業などの市場開放を柱とする重要施策を公表。さらに米中貿易の不均衡について、「中国は貿易黒字の追求を目標としない」「知的財産権侵害を取り締まる」など「市場開放」と「黒字幅削減」を打ち出してトランプ政権への歩み寄りを示した。

ホワイトハウスは重要閣僚のリシャッフルが進みいまや対中強硬派で固められたが、一方の中国サイドは3月の全人代で国家副主席となった王岐山とハーバード卒である劉鶴が国務院副総理に昇格して舵取りをする。この劉鶴副総理は習近平とは10代の頃からの友人と言われ、中国共産党内では経済アドバイザーとして活躍し、過去40年にわたり中国の成長政策を担ってきた人。目下は投資と輸出重視の経済から、緩やかではあるが持続可能な消費中心の成長へと転換しようとする政策の中心人物ともいわれている要人中の要人だ。したがって今後の米中関係の行方を左右する人物であり、2月にもワシントンを訪問し、トランプ米大統領が凍結していた両国の通商協議再開のお膳立てをすると期待されていた。 ただこの時はトランプ政権が中国を標的にした鉄鋼・アルミニウムの輸入制限措置を発表したタイミングに当たった。つまりこの日を境に米政府が対中制裁の追加関税品目500億ドル相当の公表、中国側の報復措置、それに応じてトランプ氏が追加関税対象を1000億ドルまで拡大する意向を示すなど、対立はエスカレートするばかり。 したがって海南島での習主席の開放政策についての演説は効果的だった。今後の中国の対米経済政策が劉鶴副首相に主導されることは明らかであり、今後米中対話の進展が注目されるところだ

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金融工学発展の功罪

2018.02.20 15:40

アポロ13号が月面着陸をしたのが約半世紀前の1969年7月。これを機に宇宙への夢が世界中で広がったが1970年代後半に至り財政負担に耐え切れず中止になった。おかげで本来NASAに向かうべきロケットサイエンティストたちがウォール街に流入することになり、一気に金融工学が開花することになったのはそれなりの必然だった。

 

それ以降の金融市場の目覚ましい発展は知っての通りで、オプションやレバレッジの発展、そしてアルゴリズムさらにAIによる予測技術の日常化などその果実は数えきれない。とはいえその副作用として相場の大幅変動がもたらされたのも事実である。それがまさに2月2日(金)以降の世界の株式同時暴落である。同日発表された米国雇用統計に相場は上昇したが、それも束の間金利上昇が嫌気されて株価が反転。そしてそのハイライトは翌月曜日(5日)のNY市場の後場遅く。僅か数分の間に1000ドルを超える下落となり、その後半値戻し、またまた下落とup downを繰り返し、1日で1200ドルと史上最大の暴落となった。

 

このNY市場の荒れ相場にはアルゴリズムが大きく作用した。数学的に編み出された売買手法が起動してHFT(High Frequency Trading)つまり高速回転取引やストップロス取引が大量に執行された。これまでもアルゴリズムが相場の大幅変動の理由として指摘されてきたが、今回もまた同様と言うことだろう。ここ2~30年の金融市場はレバレッジが縦横に組み込まれているせいで上げ相場はより上がり、下げ相場では収縮がより加速化する。今回についても米国株に続いて米国債、日本株、そしてドル円と売りのオンパレードとなったが、そのきっかけは人間の判断で「人為的」な下げと言った感じではあったものの、その後の売りは「機械的」と言ったもので、まさに人の開発した金融的仕掛けが変動を加速させたと言えよう。

 

リーマンショックから間もなく10年。これまで右肩上がりに上昇してきた相場もトランプ大統領の一般教書演説での自画自賛が相場のピークを告げたのかもしれない。ここ数日は先行き不安も多少収まったようにも見えるが、相場の自律調整は株から為替へとその壁を越え、また米国から日本へと国境を越えて世界へと伝播しつつある。とくに円相場について言えば何よりもレパトリが目立つ季節であり為替需給に不足感は乏しい。しばらくは値ごろ感からのドル買い・円売りの誘惑に負けず円高の潮流に乗るのが得策ではないだろうか。

 

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既視感

2018.01.24 09:43

新年もすでに20日を経過したが円相場は113円台から110円台へと上昇しており2018年の大相場を予感させる展開が続いている。とはいえすでに10日間近く陰線が出続けてきただけにそろそろ110円を目前にして一服かとも思える。次週は調整場面と考えてよいのではないだろうか。

 

ところで相場格言では「申酉(さるとり)騒ぎ戌(いぬ)笑う」と言うが、今年は円安・株高のリスクオン相場継続とはいかないように思える。申年も酉年も新年から上海株や人民元の暴落さらには北朝鮮の核実験など東アジアリスクの台頭に迷走気味のスタートとなったが、戌年もまた中国発のニュースが相場を動かした。実際1月10日ブルームバーグは、中国が外貨準備の米国債への投資を減額もしくは停止することを検討しているとのニュースを伝え、米国債(10年物)の金利が上昇し円高も進んだ。(翌日中国政府はその報道は事実無根だとした。)このような情景に既視感を覚えたが、それは20年前に橋本龍太郎首相(当時)が「米国債を売りたい」と発言し物議をかもしたことである。この発言を機に円相場は116円から110円へと上昇したがやはり一見盤石に見える米国の経済システムも国際金融市場もいつ何時揺らぐのか分からないということだ。

 

この10年金融市場はリーマン後の非常事態を乗り越えるために非伝統的金融政策を推進してきたが、今年は如何にそれを脱し正常化を進めるかがテーマだ。米国については2月にパウエルFRB新議長が登場するが、基本的にはイエレン路線を踏襲するとみられる。一方新鮮味があり市場へのインパクトが大きいのが欧州および日本の金融政策の行方だ。ECBは明確に出口戦略へと舵を切っていることから、ユーロ高が著しい。続いて注目されるのが、これまで出口戦略を否定し不動のスタンスを貫いてきた黒田日銀の次の一手だ。過日日銀が超長期債の買いオペを見送ったことが一気に円高の流れを作ったように、今後日銀の実質的なテーパリングの進捗が市場の注目を集めては円高を後押しすることになるだろう。

 

その日銀では黒田総裁の任期が来る4月に満了となる。その後任に誰がなるにしても量的緩和策の「修正」が行われることになるだろう。つまり「大胆さ」を売りにした異次元緩和政策を何らかの形で収束させ、かつて政府筋から「しょぼい」と言われた穏健な緩和政策を行った白川時代のような政策運営へと回帰するのではないか。つまりこの5年黒田日銀が強引に進めた円安を軸とした金融政策が修正されるのだ。つまり今後の円相場を展望すれば「2018年の円高」は回避しがたい状況にあり、70円台から80円台を推移した白川総裁時代の既視感が蘇ってくるのである。

 

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