ネクスト経済研究所|国内外の経済・政治・社会の方向性を洞察

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ノーベル賞と職人芸 

2015.12.22 09:34

今年も二人の日本人が受賞するなどノーベル賞は今や秋の一大行事となった。12月10日のノーベルの命日に行われる授与式はそのクライマックスと言ってよいだろう。2年前と言えば旧聞に属するが、2013年の経済学賞は、「市場の本質」に迫ったシカゴ大のユージン・ファーマ教授やエール大のロバート・シラー教授らに授与されたが、この2人の価格形成理論は大きく異なっている。つまり「効率的市場仮説」を唱えるファーマ教授は、全ての情報がくまなく行き渡って価格に織り込まれているとし、過去の情報で将来の価格を予測することは困難であると主張。一方、シラー教授は心理的バイアスにより理論値と実績値の乖離が存在することから価格形成は合理的なものでなく、また市場が非効率であることから、予測可能性の余地があることを指摘した。

 

このように市場の認識について「効率性」と「非合理性」と言った両極端に位置する概念を主張する両教授が同時受賞したのは、市場の本質が未だ解明されていないことを示していると言える。株式市場を主体に研究したファーマ教授は、たとえプロの投資家であっても、他人より有利になる情報を入手し高いパフォーマンスをあげ続けることは無理であるとした。従って積極的にリスクを取り相場の波に乗ろうとするアクティブ運用はパッシブ運用に勝てないと結論した。

 

実際、平均を上回るリターンを追求するアクティブ運用は、高額報酬なども加わりコスト高でもあることから投資家離れが進んでいる。特に2008年のリーマンショックにおける株価暴落においてアクティブ運用の損失回避能力への信頼が失われて以来、市場への連動性の高いインデックスファンドが人気を集め、米国ETFの資産額が大幅増加しているのはそれを受けたものと言ってよい。このように、ファーマ教授の理論は、アクティブ運用の主役となるファンドマネーシャーの職人芸を根本から疑っている。

 

しかし、本当にファーマ教授の指摘するように、市場に「情報の非対称性」は存在することなく、投資家はすべからく重要な情報を認識し、その結果として常時価格は適正水準にあると言えるのだろうか。やはりシラー教授の言うように市場は非効率であり経験を持ったファンドマネージャーやディーラーが職人芸を活かす活躍の場があると考えるのが妥当ではないか。両教授はそれぞれ株式市場そして住宅市場の分析により市場の本質に迫ろうしているが為替市場の研究はまだ道半ばだ。今後どのような理論が提起されるのか想像がつかないが、長く為替市場で飯を食ってきた人間として為替市場に職人芸が存在することが理論化されることを願っている。

 

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クロダノミクスの限界と円高の予感

2015.12.22 09:32

2016年を前にして、市場では日米欧の金融政策の方向性の違いに関心が集まっている。

米国では9年半振りの利上げが実施され、今後1年は年3回程度の市場金利引き上げが織り込まれたようだ。この結果12月4日に市場の予想通り追加緩和措置を発表した欧州中央銀行(ECB)と18日の日銀政策決定会合で金融政策の強化姿勢を示した日銀との政策スタンスのねじれが明確となった。特に猛烈なスピードで量的緩和策を続行する日銀については、その経済効果は当初の目論見と異なり限定的でさらに政策の手詰まり感も漂う。また円安の弊害も目立つ中でアベノミクスを支えたクロダノミクスの限界露呈が今後の相場のカギとなるだろう。

 

2013年4月、黒田総裁の「期待」に働きかける異次元緩和策が導入されて既に2年8か月を経過した。当初はそのサプライズに市場は大きく反応したが、「期待」は徐々に経年劣化し、また実体経済への負の効果も明らかとなってきた。その後追加緩和策も行われたが、原油価格下落の影響もあり8月以降3か月に渡りコアCPIはマイナス圏で推移しておりインフレ2%目標は遠くにかすむ。一方円安が進行したことか、大企業製造業こそ利益を計上しているものの経済は停滞したまま。そして国民生活は輸入インフレの圧力を受けて食品価格が上昇し実質賃金が低下する悪循環に見舞われるなど円安の弊害ばかりが目立つ。

 

すでにインフレ2%の目標達成は16年度後半頃へと再度先延ばしされているが一体いつ実現されるのか分からない。そもそも2%の目標設定が正しかったのかどうかも定かでない状況で、例え目標が達成されても当初期待されたように日本を覆うデフレマインドが 払拭されることはないだろう。現在の日本のデフレ状態は生産年齢人口が減少し、競争力が低下していることが根本原因であるのだから金融政策だけでそれを取り除くのは無理というものだろう。つまり円高・デフレの時代へ再突入する可能性も否定できないのだ。

 

12年11月の野田首相(当時)の衆院解散発言以来株高・円安が続き、15年の株価は昨年末(17450円)を更新して4年連続の株高を実現するだろう。また円相場も昨年末(119円80銭)を更新し4年連続の円安で越年する可能性が高い。しかし過去3年おしなべて年間10%以上の円安を辿ったことからすると、今年はこれまで2%程度の円安に止まっており、モメンタムが失われつつあることは明らかだ。つまりクロダノミクスの限界が見え隠れし「期待」が色あせつつある状況を眺めていると、2016年はいよいよ円高が進む予感に捉われる。

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