ネクスト経済研究所|国内外の経済・政治・社会の方向性を洞察

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ノーベル賞と職人芸 

2015.12.22 09:34

今年も二人の日本人が受賞するなどノーベル賞は今や秋の一大行事となった。12月10日のノーベルの命日に行われる授与式はそのクライマックスと言ってよいだろう。2年前と言えば旧聞に属するが、2013年の経済学賞は、「市場の本質」に迫ったシカゴ大のユージン・ファーマ教授やエール大のロバート・シラー教授らに授与されたが、この2人の価格形成理論は大きく異なっている。つまり「効率的市場仮説」を唱えるファーマ教授は、全ての情報がくまなく行き渡って価格に織り込まれているとし、過去の情報で将来の価格を予測することは困難であると主張。一方、シラー教授は心理的バイアスにより理論値と実績値の乖離が存在することから価格形成は合理的なものでなく、また市場が非効率であることから、予測可能性の余地があることを指摘した。

 

このように市場の認識について「効率性」と「非合理性」と言った両極端に位置する概念を主張する両教授が同時受賞したのは、市場の本質が未だ解明されていないことを示していると言える。株式市場を主体に研究したファーマ教授は、たとえプロの投資家であっても、他人より有利になる情報を入手し高いパフォーマンスをあげ続けることは無理であるとした。従って積極的にリスクを取り相場の波に乗ろうとするアクティブ運用はパッシブ運用に勝てないと結論した。

 

実際、平均を上回るリターンを追求するアクティブ運用は、高額報酬なども加わりコスト高でもあることから投資家離れが進んでいる。特に2008年のリーマンショックにおける株価暴落においてアクティブ運用の損失回避能力への信頼が失われて以来、市場への連動性の高いインデックスファンドが人気を集め、米国ETFの資産額が大幅増加しているのはそれを受けたものと言ってよい。このように、ファーマ教授の理論は、アクティブ運用の主役となるファンドマネーシャーの職人芸を根本から疑っている。

 

しかし、本当にファーマ教授の指摘するように、市場に「情報の非対称性」は存在することなく、投資家はすべからく重要な情報を認識し、その結果として常時価格は適正水準にあると言えるのだろうか。やはりシラー教授の言うように市場は非効率であり経験を持ったファンドマネージャーやディーラーが職人芸を活かす活躍の場があると考えるのが妥当ではないか。両教授はそれぞれ株式市場そして住宅市場の分析により市場の本質に迫ろうしているが為替市場の研究はまだ道半ばだ。今後どのような理論が提起されるのか想像がつかないが、長く為替市場で飯を食ってきた人間として為替市場に職人芸が存在することが理論化されることを願っている。

 

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クロダノミクスの限界と円高の予感

2015.12.22 09:32

2016年を前にして、市場では日米欧の金融政策の方向性の違いに関心が集まっている。

米国では9年半振りの利上げが実施され、今後1年は年3回程度の市場金利引き上げが織り込まれたようだ。この結果12月4日に市場の予想通り追加緩和措置を発表した欧州中央銀行(ECB)と18日の日銀政策決定会合で金融政策の強化姿勢を示した日銀との政策スタンスのねじれが明確となった。特に猛烈なスピードで量的緩和策を続行する日銀については、その経済効果は当初の目論見と異なり限定的でさらに政策の手詰まり感も漂う。また円安の弊害も目立つ中でアベノミクスを支えたクロダノミクスの限界露呈が今後の相場のカギとなるだろう。

 

2013年4月、黒田総裁の「期待」に働きかける異次元緩和策が導入されて既に2年8か月を経過した。当初はそのサプライズに市場は大きく反応したが、「期待」は徐々に経年劣化し、また実体経済への負の効果も明らかとなってきた。その後追加緩和策も行われたが、原油価格下落の影響もあり8月以降3か月に渡りコアCPIはマイナス圏で推移しておりインフレ2%目標は遠くにかすむ。一方円安が進行したことか、大企業製造業こそ利益を計上しているものの経済は停滞したまま。そして国民生活は輸入インフレの圧力を受けて食品価格が上昇し実質賃金が低下する悪循環に見舞われるなど円安の弊害ばかりが目立つ。

 

すでにインフレ2%の目標達成は16年度後半頃へと再度先延ばしされているが一体いつ実現されるのか分からない。そもそも2%の目標設定が正しかったのかどうかも定かでない状況で、例え目標が達成されても当初期待されたように日本を覆うデフレマインドが 払拭されることはないだろう。現在の日本のデフレ状態は生産年齢人口が減少し、競争力が低下していることが根本原因であるのだから金融政策だけでそれを取り除くのは無理というものだろう。つまり円高・デフレの時代へ再突入する可能性も否定できないのだ。

 

12年11月の野田首相(当時)の衆院解散発言以来株高・円安が続き、15年の株価は昨年末(17450円)を更新して4年連続の株高を実現するだろう。また円相場も昨年末(119円80銭)を更新し4年連続の円安で越年する可能性が高い。しかし過去3年おしなべて年間10%以上の円安を辿ったことからすると、今年はこれまで2%程度の円安に止まっており、モメンタムが失われつつあることは明らかだ。つまりクロダノミクスの限界が見え隠れし「期待」が色あせつつある状況を眺めていると、2016年はいよいよ円高が進む予感に捉われる。

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中秋節に思ったこと

2015.10.22 18:21

去る9月27日の中秋の名月はスーパームーンにあたり普段より14%も大きい満月となった。そもそも中秋を愛でる風習は中国に起源を発するが、中秋節には丸い月餅を食べて満月を祝う。その日から国慶節へと繋がった大型連休は、中国経済が不振と言われるにも拘わらず、日本の全国津々浦々で中国人の爆買いが報道された。同時にマナー違反の凄まじさも伝えられたが、例えば日中間を結ぶLCCが発着する空港には段ボールなどのごみが山のように積み上がった。しかもこれまでの訪日客は中国では経済的に豊かで比較的公共心の高い人々だったと言うのだから日中関係がより濃密になり訪日客が増加する今後は果たしてどうなるのか。

 

一方時同じくして習近平主席は太平洋を越えて訪米し米中首脳会談や国連演説を行った。しかも近頃の米中関係の冷え込みを和らげる為に最初にシアトルへ降り立ちビルゲイツ、ティム・クック、ジェフ・べゾス、マーク・ザッカ―バーグなどIT企業のトップと会合。同時にボーイング社を訪れ300機(約4.5兆円)の購入契約を結ぶなど経済力で米中融和を演出した。これら習主席による爆買いは3年前の副主席時にかつてホームステイしたアイオワを訪れ、日本の輸入額の2年分に当たる大豆(約4千億円)の大量輸入を行ったことに続くものだ。しかし南シナ海、サイバー空間さらに宇宙空間において米中激突が進行していることから、今回の経済演出の効果は限定的に止まった。首脳会談後の記者会見での両首脳の表情がすこぶる硬かったのは印象的だ。「米中は対等な大国関係」を中国は標榜しているものの、今後両国の関係は冬の時代に突入する可能性が高く、様々な分野での摩擦が表面化するだろう。

 

中国では30年に渡った投資主導による高度成長が曲がり角にきており、消費主導へソフトランディングさせることができるのか注目されている。中国の成長は現状7%水準で推移しているものの、仮に5%水準となれば世界の成長率はメルクマールとなる3%を割り込むこととなり、世界経済は一気に緊張度を増すことになるだろう。それは新興国のみならず貿易量が全体の20%と中国依存を高める日本経済への影響が大きいことは必至だ。特に4~6月のGDPがマイナスに転じたように日本経済が停滞感を強める中で中国経済の下押しに直撃される可能性は高い。株、不動産で始まった中国ショックは徐々に実体経済へと波及しつつあり、これが限界値に達した場合には相互に依存関係を高め合う日本を直撃するのは避けられない。現在緩慢な展開を続ける円相場だが、中国ショックー円高―日銀追加緩和―円安といつ何時ジェットコースターに乗っているような状況に陥るかも知れぬ点にはくれぐれも要注意だ。

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噂で買って事実で売る

2015.09.14 17:26

「噂で買って事実で売る」(Buy the rumor, sell the fact)との格言があるように、相場は期待感で大きく上昇し、その期待が現実化すると期待が大きい分だけ急速にしぼみ下落するものだ。現在の米ドル利上げを期待したドル高は、2013年5月22日にバーナンキFRB議長(当時)が議会証言において、量的緩和の早期縮小(テーパリング)の可能性に言及して以来だ。このバーナンキショックは新興国市場を冷え込ませ、ドル全面高を招来したがそのトレンドは今も続いている。

 

それから2年3か月、米国の金融正常化に向けて第一弾のテーパリングは終了し、そして第二弾として金利引き上げが行われようとしている。9月18日の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが決定されるとの9月説、いや12月だとの説、さらには年内2回説など様々だ。どちらにしても年内利上げ必至との見方は期待を呼びドル買いが進む。一方金・銅・原油などの商品価格が12年振りの最安値に達するなど、ポジションはドル買い、商品売りへと大きく傾いている。このように時間をかけて作られたポジションは何時巻き戻しが起こるのかが次の注目点になる。

 

これまで過去2回の米国の金利引き上げを振り返ってみる。1999年6月から2000年5月までの11か月においてFFレートは6回にわたり累計1.75%引き上げられた。そして2004年6月から2006年6月までの間においてFFレートは14回累計4.25%引き上げられている。この市場への影響について、最初の利上げ以降6か月の相場動向を見ると、前者が19円、後者が5円と必ずしもドル高とならず、逆に円高へと転じているのだ。つまり「噂で買い事実で売る」格言が正しいとの結果が導きだされる。「今回は違う」との声も聞こえそうだが、利上げに大きな期待が高まった現在はまさに「事実で売る」好機が訪れたのではないだろうか。

 

現在のドル円相場を見るとこの半年近く120円から125円のレンジで動いている。特に6月末から7月前半のギリシャ危機や中国株価暴落により金融市場でリスクへの認識が高まった時に120円台への円急騰以降は、米国利上げを材料に円安へと進んでいる。すでに年内130円、来年には140円などとの声も強まるなどポジションは大きくドル買いに傾いているに違いない。つまり「噂で買い、事実で売る」環境が整いつつあるのではないだろうか。利上げ決定の報にドルが上昇した場面ではドル売り円買いで対応したい。

 

 

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北京で蝶が羽ばたくと   

2015.08.20 17:19

ネクスト経済研究所  斉藤 洋二

上海総合指数は2014年5月の2000水準から15年6月12日に5200に迫るなど急伸していたが、7月9日には3300台と約3割の下落を見た。その騰落スピードはまさに中国株のみならず中国経済バブルの破裂を連想させた。日本の株式市場は個人投資家の占める割合が低く、機関投資家と外人投資家が支配している。一方、中国の株式市場は年金制度が未発達で市場の機関化が進んでおらず、また外人投資家の参入規制もある。従って個人投資家が信用取引を支えにして市場を支配しており、当然その値動きが荒くなる。ただリーマンショック時にも同指数は半分程度へ下落したことからすれば、今回の値動きの激しさは驚くほどではなかったのかも知れない。

 

「北京で蝶が羽ばたくとニューヨークで嵐がおきる」とはもともと気象学で使われていたフレーズで、今や複雑系経済学を代表する表現となった。これは小さな事象が様々な波及経路を辿り予想外に遠い所に伝播し、想定外の影響をもたらすことを教える。現在の世界経済や金融市場は金融技術の進歩によりシステムが複雑となり、リスクが絡みあっている。従って中国で発生した波乱がどのように世界に影響を与えるかについては読みづらい。その背景のひとつには、中国が「社会主義市場経済」という分かりにくいシステムを導入していることもある。このシステムは共産党一党独裁下において自由な経済社会を実現するという他に例の無い試みであり、一般の金融常識が通じにくい。とはいえ「北京の蝶」の動きには今後も最大の注意を払わねばならないということだろう。

 

今回の事象は北京ではなく上海や深圳で発生し、またその影響はニューヨークに嵐ではなく、ギリシャ情勢で神経質となっていた世界の株式市場にダブルショックをもたらした。とりあえずその影響は一過性に止まったが、そのリスクの芽が完全に排除されたとは言えない。この株価の急落は中国の個人消費にボディーブローとして効き、中国経済の下押し材料として働くだろう。また不動産市場は下落が鮮明となっており、ゴーストタウンの出現も珍しくなくなった。このような中国経済の落ち込みは、欧米のみならず日本などの中国への輸出減少により世界経済に影響を与えることになるだろう。

 

日本経済が輸出そしてインバウンドなど中国景気に支えられてきたことを思えば、中国経済の成長率低下は日本に不況感を強めることは回避しがたい。また安倍内閣の支持率低下に見られるように過去2年半円安・株高をもたらした「アベノミクス」の賞味期限切れが迫っているとも言え、円高・株安の圧力がかかる可能性も無しとしない。円相場はこのところ125円台をピークに121―124円台で推移している。ここは高値でドルを売り、安値でドルを拾うスタンスで良いのではないだろうか。

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金融シャーマンのお告げ

2015.07.14 15:17

グリーンスパン米FRB議長(当時)以来、中央銀行総裁の発言は世界の耳目を集め、金融市場はその謎解きに苦しみ、また一喜一憂してきた。そこで2013年FTの記者が中央銀行総裁を「マネタリー・シャーマン」つまり現代の金融シャーマンと命名した。かつてシャーマンとは霊、神霊、精霊、死霊などの超自然的存在と交信する人物のことを指し、人々はそのお告げを読み解いて問題解決の糸口を見出してきた。実際ECBのドラギ総裁の12年夏の「何でもする」との「お告げ」はユーロ崩壊の危機を劇的に回避させたものとして永遠に記憶されるだろう。つまり金融シャーマンの「発言」=「お告げ」は魔術的であり神性を感じさせてくれるのだが、本来の意味を読み解くことやどこまで信じるかの判断が難しいのが頭の痛いところでもある。

 

このところのマネタリー・シャーマンのお告げを振り返ると、5月7日のイエレンFRB議長が「株は割高」と発言した。その真意は年内と予想される米利上げに備えてポジション調整を促したのではないかと見られる。さらに6月5日にドラギECB総裁が「長期金利の乱高下に慣れた方が良い」との発言も傾聴に値するだろう。つまり両者の発言から読み取れるのは低金利・株高が極限に近付いており、今後中銀の金融政策によるコントロールを超えたところで市場が荒れることを示唆したものであると考えられる。そして真打が6月10日の衆院財務金融委員会における黒田日銀総裁による円安けん制発言だ。内容は実質実効為替レートが「ここからさらに円安に振れて行くことはありそうにない」との見通しで、この発言を受けドル/円は124円半ばから瞬時に2円ほども急落し、甘利経済財政相が火消に回るなどあらためてシャーマンのお告げのインパクトをひしひしと感じさせてくれた。

 

市場では今後短期間で130円に到達するとの専門家?の予測が高まっていただけに黒田シャーマンのお告げのタイミングの良さには舌をまくしかない。とはいえそのお告げを読み解けば、通貨の貿易上の対外競争力を示す指標である実質実効為替レートが変動相場制に移行して42年間において最も安い水準にあることは明らかで、「ここからさらに実質実効為替レートが円安にふれていうことは、普通に考えるとなかなかありそうにない」との発言は元財務官である黒田シャーマンの本音、つまり総裁としての立場を超越した相場観であり至極もっともと言えよう。但しそれが真実であるとしても市場はいつも行き過ぎなど「だまし」がつきものであり、どのように「だまし」と付き合い、時間の経過に耐えるかが勝敗の分かれ目となるだろう。ともかくここは「信じる者は救われる」と考えれば、この際黒田シャーマンのお告げに従い、「125円は壁」を念頭に高値圏での売りを先行し、安値は軽めに拾う戦略をとるのが良いのではないだろうか。

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治にいて乱を忘れず

2015.06.24 17:44

「治にいて乱を忘れず」

フランス・ブルゴーニュ地方はワインの名産地で、有名レストランが多数点在する。かつて三ツ星レストラン「コート・ドール」は有名なオーナーシェフのベルナール・ロワゾー氏の自殺により閉店に追い込まれた。自殺の背景は、三つ星維持が困難になりそれを苦にしたと言われる。そもそも三つ星とは、1900年、仏タイヤメーカーのミシュラン社が旅人の参考に、レストラン・ホテルの一覧を無料で提供したことに始まる。それぞれの快適性や味を基本に、1-3個の星、更にはフォークや屋根の数で評価を示し、食事・宿泊の羅針盤とした。それがいつの間にか、星獲得がシェフ達の目標となり、覆面調査員に怯える姿が日常化し、ミシュランは格付けの大権威となった。星3つは宿泊してでも尋ねる価値があるとされ、店側はメニューの充実、ワインの豊富さ、味、サービス、快適空間の提供が求められることとなり経営が圧迫されている。そしてここ数年覆面さらには公式調査員が北米、アジアに進出しているが、その手法や結果の公平性・客観性などについて様々な疑義が生じているのだ。

 

しかし勝手に格付けされて困るのはレストランだけではない。同様のことが金融の世界でも日常化している。大手格付け3社は債券投資家の為に格付けを始めたが、いつの間にか権威となり、各国の命運を握るという主客逆転の不思議な現象が生じている。先月末、格付け会社フィッチは、日本の格付けをA+からAに1段階引き下げ全21段階のトップ(AAA)から6番目とした。その理由は日本政府が消費増税を先送りしたものの、穴埋め策を今年度予算で講じなかったこと。因みにムーディ―ズもS&Pともども政府債務残高の拡大を懸念して2000年頃から段階的に引き下げている。それではこのような格付けは信用できるのだろうか。リーマンショック時最終的に紙屑となった種々債券にトリプルAを与えていたことも記憶に新しい。一方南欧諸国の国債に対して投資不適格の烙印を押し、デフォルト危機に追い込んだことも印象的だ。各国金融当局がクレームをつけ反論し、またEUにおいては「新しく欧州の会社を作る」との意見も出た。やはり格付け会社を格付けする会社が必要なのかも知れない。

 

そして格下げニュースの為替市場への影響だが、かつては「日本売り」と騒がれたこともあったが、徐々に反応は鈍くなっており今回もまた119円から50線程円安へ振れただけと僅かに止まった。ニュースのインパクトが落ちたこともあるが、為替市場は昨年夏頃のひと月2円程度しか動かない低ボラティリテ―の時期に再突入したようだ。と言うことで当面は119円以下は買い、120円50銭以上は売りの高値売り安値買いによるディーリングに徹するのが良さそうだ。但し昨年ハロウインショックで眠りを覚まされたように「治にいて乱を忘れず」との格言を肝に銘じて置かねばならない。突然やってくる大相場への心の備えに怠りなければ憂いなしだ。

 

 

 

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バーナンキ氏のブログとご託宣

2015.05.01 13:27

ブログは趣味から専門分野まで様々な分野において自己主張できるツールとして世界的に流行っている。SNSの人気拡大で利用者の増加は頭打ちとも言われるが、日本国内で稼働しているブログ数は300万本に上ると推定されている。このような発信の場であるブログを米連邦準備理事会(FRB)議長を務めたベン・バーナンキ氏が開設した。これまで市場がその発言に耳をそばだてていただけに言いたいことも言えない鬱憤はいかばかりだったろうか。ブログ冒頭において「一般市民に戻った今、FRBウォッチャーに発言を精査されることなく、経済や金融についてコメントできる」と書いている通り、今後自由に見解を述べ、趣味のベースボールについても触れるようだ。早速「なぜ金利はそんなに低いのか」について論じ、ローレンス・サマーズ元米財務長官が主張する「長期停滞論」への批判も行い、(米メディアに言わせれば)「世界で最も重要で、尊敬されるブログ論争」が始まった。

 

「長期停滞論」は産業革命から200年余りを経過した現在、米国に限らず先進国の経済は成熟した結果、投資機会も減少して停滞を余儀なくされている、とする。もちろんITの躍進は目を見張るものがあるものの、19世紀から20世紀にかけての技術革新には遠く及ばない。さらに先進国では人口増加率の低下もあり投資増大は期待できない。これらを踏まえ、現在の米国の低成長は構造的問題でありバブルを発生させない限り満足な回復が期待できない、としている。一方で今般のバーナンキ氏の批判は、現状の低成長を「一時的な向かい風」と捉え低金利が続けばやがて投資が回復するとしている。「構造的な問題」か「一時的な現象か」。この論争が直ちに決着するとは思えないがどちらにしても世界的な低金利現象は当面続くことになるだろう。

 

一方世界が低金利状態に陥る中で市場は日米の金融政策の行方を睨みドル/円相場は保ち合い状態が続いている。米国の利上げの時期について6月か9月かそれとも来年か。また日本の追加緩和は早ければ4月30日にとの見方がある一方で、年内は無いとの見方などまちまち。この日米の金融政策の不透明を受けてしばらく相場は動きづらいが、早ければ4月30日の可能性には注意を払いドル売りは控えた方が良さそうだ。原油価格もWTIが一時の43ドル台から57ドル台までもどるなど底打ち感も広がっており当面急激な円高の可能性は少ないだろう。ここはバーナンキ氏にご託宣を聞いてみたいところだがそれは適わぬことでもあり、とりあえず下がれば買い、上がれば売りのディーリング続行が良いのではないだろうか。118円台以下でドルを仕込めば120円~121円で売れるだろう。

 

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嘘から出たまこと

2015.04.10 15:29

3月15日に閉幕した全人代において、就任以来3年目を迎えた習近平指導部は、経済目標を「高速成長」から「新常態」(ニューノーマル)つまり「持続的成長」への転換を明確にした。これまで中国経済は30年余りにわたり輸出・投資主導により年率10%程度の成長を続けてきたが、今や環境問題や労働コストの上昇などにより外資を導入しアクセルをふかせ続けることは難しくなり、今後は消費主導型へと転換を図る。しかし経済に減速感が強まる中での「新常態」への移行は、目標とする7%成長から一気に5%割れへと経済の底割れを招く可能性も秘める。

 

毎年世界十大リスクの上位にロシア、イランとならび中国がランクインするが、チャイナリスクには政治リスクと経済リスクの2通りある。政治リスクについては共産党一党独裁がスタートして60年余りが経過したが、国内には民族抗争や格差などの矛盾が拡大しており国家破綻のリスクは拭えない。一方このような政治リスクを回避する最善策として推進されてきた経済成長は、ここにきて底割れリスクすなわち経済リスクが出てきている。ただチャイナリスクはこれまで再三にわたりまことしやかに語られてきたが、これまで表面化することは無く、近頃ではチャイナリスクを語ることはオオカミ少年のように見られると言っても過言ではない。

 

これまで中国経済を牽引してきたものとして貿易、不動産そして金融が挙げられる。しかし貿易は減速傾向に入り、地価は全国津々浦々で下落し、さらに地価下落は逆資産効果により中間層の購買意欲を減退させている。また未発達の金融市場は2013年6月に流動性逼迫をもたらした「影の銀行」(シャドーバンキング)問題が依然横たわっていることを忘れるわけにはゆかない。実際地方そして金融機関に存在する不良債権の大きさを推し量れば、リスク発生時には中国国内のみならず国際金融市場へのインパクトの大きさは尋常でないだろう。

 

現在為替市場において人民元は1ドル6.23台とドル高元安推移しているが、チャイナリスクが顕現した場合、人民元暴落の可能性は大きい。人民元/円相場を見ると、2012年の12円から14年には20円に接近し現在19円40銭前後で推移している。今後、人民元売り/円買いを長期保有するのは面白そうだ。今さら人民元の暴落など持ち出せばオオカミ少年と言われそうだが、いつか「嘘から出たまこと」になるのではないだろうか。

 

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しっぽが犬を振り回す 

2015.03.12 09:30

メソポタミア5千年の金融史を紐解くまでもなく、貸し手が借り手よりも立場が強いことは金融取引の基本である。しかし時としてこの常識を逸脱することが起きるもので、近頃では欧州諸国と経済規模が2%に止まるギリシャとの関係が挙げられる。2012年のユーロ不安の際と同様、今回もまた借り手が貸し手よりも強い立場を貫いている。その様はまさにしっぽ(ギリシャ)が犬(欧州諸国および金融機関)を振り回していると言えよう。

 

1月25日のギリシャ総選挙においてバラマキを公約にした急進左派連合(SYRIZA)が勝利して以降、チプラス首相はギリシャ国民の期待を背に各国と交渉を行ってきた。当初より「敵はベルリンにあり」と狙いを定めており、ユーロ離脱の切り札をちらつかせながらの借金棒引き作戦だ。ギリシャは、2月末に期限を迎える支援プログラムを現行通りの緊縮条件で合意するか、あるいはこれまで課せられてきた財政緊縮を取り払った新たな支援の枠組みを手にすることができるかの瀬戸際にあったが、チプラス首相も国民に大見得を切っているだけに簡単には引き下がれない状況に追い込まれてきた。期限までに合意できなければギリシャは3月中に財政破綻を来すことを目前にしていたが、20日のユーロ財務省会合でとりあえず4か月延長することで合意し、時間を確保することができた。

 

ドイツとギリシャが犬猿の仲であることは、欧州各国民の意識調査にも明らかだ。つまりドイツは多くの国から勤勉で信用できると認識されているが、逆に不信または怠惰と見なされているのがギリシャだ。また、ギリシャ人はドイツをまるで信用しておらず、ギリシャ人とドイツ人の溝は深い。ギリシャ人の反独感情を根付かせたのはナチス占領の記憶であり、さらに3年前にメルケル首相に課された緊縮財政による年金カットや徴税強化などの痛みが背景にある。従って債務削減交渉は、ドイツが厳しい立場を堅持しており、ドイツ・ギリシャ間の怨念が深いだけに今後も両者がどこまで歩み寄ることができるのか予断を許さない。

 

年初来の金融市場は原油安に加え前述したギリシャ問題が重くのしかかりリスクオフムードが蔓延してきた。しかし原油価格(WTI)が43ドル台まで値下がりした後、50ドル台を回復していることを受けドル/円相場も116円から120円のレンジで底割れすることなく厚い雲の中を彷徨ってきた。来週以降ギリシャのデフォルトによる底抜けの可能性がひとまず回避されただけに雲の上抜けをトライする動きが高まるのではないか。どちらにしても4か月の時間を確保したものの、引き続きしっぽが犬を振り回す状況は続きそうだ。

 

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