辰年は?
2011年兎年は、世界は欧州債務危機、
国内は、東日本大震災の復旧・復興に終始した。
世界経済は新興国を除き低成長に喘いだ。
日本についても、株は下値を探り、また円高が続いた。
結局、日本株は底値水準、円も高値水準で越年の気配となった。
さて12年辰年は?
まず欧州。
ユーロ崩壊の憶測は消えて無くならない。
成長率もゼロ近辺になりそうだ。
ただ欧州発の悪いニュースへの市場の反応度が薄れて来た。
これが最大のユーロ下支え材料になるものと思う。
新興国代表の中国。
これまで9%の成長を維持してきたが、景気減速は必至。
土地バブル崩壊の危機も高まる。
新しい波乱要因になる可能性が高い。
そして米国。
欧州・中国に比し、相対的に評価は高い。
ただ失業率8%台、成長率1%台と内実は厳しい。
経済成長の目玉となる産業はなく、金融政策頼み。
QE3の出動を待ち望む声は根強く、世界経済を牽引するには力不足。
そして日本。
輸出に頼る構造は不変で、世界が不況感を強める中で苦しい。
株価は米国と上海次第で多くは期待できない。
以上から、
世界的な経済減速下、株価に力強さは期待できない。
と言っても既に一年間下値を探ってきた。
相場は既に下方硬直的である。
為替は全て最下位候補の様相。
金融政策の緩和の余地の大きさが最弱通貨決定の
最大の要因と見られる。
従って、この基準に基づき、弱い順に並べると、中、欧、日、米、
の順番になるものと予想する。
最後に好材料を一つ。
世の中のエコノミストと称する人たちは殆どが弱気。
皆が弱気である時こそ反転が近い、のは相場の常道。
これこそが最大の明るい材料。
辰年は案外悪くない、と思っている。
本日を持って、今年は休筆致します。
本年はご購読頂き有難うございました。
新年は1月5日より再開致します。
Merry Christmas & A Happy New Year!
ネクスト経済研究所
斉藤洋二
風の章8
中国経済
上海総合指数は2200と2年9か月振りの安値を更新した。
中国では、豚肉が年40%も上昇するなど、
インフレ抑制が最大のテーマと位置付けられてきた。
中国経済は、輸出は世界1位、輸入は世界2位の貿易量を誇り
世界経済の動向に敏感に反映する。
従って、欧州の債務危機は輸出の減退に繋がり、
経済の減速感を強める。
加えて地方には土地バブルがありその崩壊が懸念されている。
すでに広州などでは4割も値引きしても売れない物件が出ている。
先週行われた中央経済工作会議では、景気後退が認識され、
インフレに加え景気対策にも配慮する旨が発表された。
ただ市場には、景気の大幅減速など悲観論が根強く
減税などの即効的な政策を期待する向きには不満が残った。
欧州の債務危機についても見られた通り、
中国においても、国家の対策は市場の動きについて行けない。
市場の不安心理を解消する対策を直ちには期待できない。
2012年の上海の株価は引き続き下値をトライする事になりそうだ。
ネクスト経済研究所
斉藤 洋二
風の章7
ユーロ安
クリスマスが後10日に迫り、休暇入りを目前にして
世界の金融市場は薄商いのクリスマス相場に入った。
ドル/円は、77円ー78円でのこう着状態が続いている。
これは一稼ぎしたいディーラーにとっては本意ではないだろうが
相場が安定している事は、多くの企業の担当者にとって居心地は悪くない。
とは言え、ユーロ/円はじりじりと下げ100円割れ目前となった。
これは欧州の政治リスクと経済の評価を反映したものである。
この間、欧米から今後を占う上で、2つの重要なレポートがあった。
1.9日、欧州首脳会談が開催され、欧州の財政危機克服について議論された。
結果は、長期的な道筋が示されたが、当面の具体策が出なかった。
従って、当面欧州を取り巻く懸念が払拭されず、暗雲が垂れ込めた状態が続く事となった。
2.一方、13日、米国ではFOMC(米国連邦公開市場委員会)が行われ金融政策の維持が確認された。
特に「米経済は穏かに拡大している」と、景気の改善を認める声明が出された。
この様に欧米における景気・政治について明暗が鮮明になった。
クリスマス明け以降、ドル堅調・ユーロ軟調が続くのは避けられないようである。
ネクスト経済研究所
斉藤 洋二
風の章6
オリンパスの今後
飛ばしと粉飾決算。
自主廃業に追い込まれた山一證券を思い出させる
オリンパス事件。
6日、第三者委員会が、全200ページに及ぶ報告書を出した。
英語版も出ており、海外紙でも大きく取り上げられている。
今後は、特捜などによる家宅捜索が始まり、
いよいよ事件の核心に迫る事になる。
1300億円の損失隠しに関して、証券会社OBが
指南した、と言われるがその手数料は10%が相場。
100億円以上が動き、一部は、個人や反社勢力などに流れたかもしれない。
その行き先についても調査されるだろう。
事件の解明とは別に、会社の行方が注目される。
今後は14日に、決算報告が行われる予定。
しかし、監査法人より「適正」との承認を得られておらず
当面上場廃止の危機に直面する。
一方、企業解体の可能性も高い。
7割のシェアーを誇る消化器内視鏡分野を欲しがる内外の企業は多い。
が、カメラ部門などは要らない。この部門は切り捨てられる運命にある。
キャノン、HOYA、富士フィルムなど買収候補企業の名前が挙がるが、
メインバンクのSMBC主導で富士フィルムが丸ごと買い取ることで
シナリオが出来つつある,とも聞く。
経営者の不明に社員が泣く。
オリンパスの今後についてはしばらく目を離せない。
ネクスト経済研究所
斉藤 洋二
山の章7
保険金不払い
生保各社に出されていた「不払い問題」についての業務改善命令が
近々解除されるようだ。
保険金の不払い問題は、生保・損保とも2005年に顕在化した。
その後の調査では、01-05年において生保各社で約1000億円の不払いが見つかった。
この背景には生保各社の利益至上主義がある。
92年以降、生保は逆ザヤに転じ、利差益、費差益が減少する中で
死差益を確保するために、意図的に支払を回避した。
さらに、各社が他社との商品差別化を図るために、入院や通院給付に関し
商品を複雑化させたが、その管理体制が整わなかった事がある。
故意・過失と、それぞれ事例ごとにその背景は異なるが、
どちらにしても契約者に対し約束した事を実行しなかった点は同じ。
ともかく、これを機に、経営陣および会社の意識改善、
更には内部監査体制の強化を図る為に、金融庁から業務改善命令が出ていた。
という事で、命令の解除が間もなく行われると言う事は、保険各社が、
体制を一新し、新しく出直す準備が整った事を示す。朗報である。
ネクスト経済研究所
斉藤 洋二
林の章 5
各社が複雑な保険商品の簡素化に取り組み、意図的な不払いもほぼなくなったと判断した。
不払い問題は、05年2月、明治安田生命が金融庁による業務停止命令を受けて表面化した。金融庁は07年2月、生保業界に対し、01~05年度の契約分の実態調査を指示。計37社で135万件、総額973億円の不払いが見つかった。
大手4社の不払い額がそれぞれ100億円前後にのぼり、金融庁は、不払い件数の大半を占めた大手10社に改善命令を出していた。
税と社会保障の一体改革
6月末の民主党税制調査会にて、2010年代半ばの、消費税の10%への引き上げを含む
「税と社会保障一体改革成案」が決定し、大綱を年内に策定する事が決まった。
ところが、今般、大綱の年内とりまとめが難しくなり
年明けにずれ込む模様だ。
この大綱には社会保障の効率化や重点化による保障費削減が盛り込まれているが
最大のポイントは消費税の引き上げの決定。
経済状況が悪化していることから、消費税の引き上げに反対する声が強い。
先日の党首討論で自民党谷垣総裁は、民主党の「抱きつき」を警戒しつつ、
民主党のマニフェスト違反を指摘した。
一方、党内では小沢派を中心に反対派が200名の署名を集める。
国民の意見はと言うと、「やむなしと」が多い。
ただ本当にその効果があるのか、との疑問も根強い。
ともかく、消費税の引き上げにあたっては、政府の本気度が問われる。
国会議員数の削減や、国会議員歳費の削減、公務員改革なども含めて
政府は丁寧な説明を求められる。
野田首相は断固進めるとの方向を示唆している。
その手腕を注目したい。
ネクスト経済研究所
斉藤 洋二
火の章4
カジノ
大王製糸の元会長が,特別背任容疑で逮捕された。
子会社、関連会社、その他から合わせて106億円の借金をし
未だ86億円を返済できず、渋谷・広尾の自宅も差し押さえられた。
父である(元)顧問は、教育責任を認めつつも、
子会社役員にも責任の一端があると述べている。
幼少の頃からジェット機で愛媛から東京へ塾通いし
筑波大付属駒場から東大法学部と進んだ。
結局この会社は、創業家が所有する子会社群により
実質的に統治されていた事が、この事件の原因のひとつではあった。
しかし何よりも2世教育の問題の難しさを示した。
ともかく、いかなる企業統治システムを作っても、
背任行為をする人間を上に頂けば防ぐことは難しい。最早、司法当局に任せるしかないだろう。
さて一企業のみならず、海外投資家の日本の資本市場への信頼をも傷付けたカジノ。
現在、世界で120余りの国で営業されている。観光資源として貴重な存在である。
日本では刑法185条「賭博に関する罪」で禁止されているが、世界的に見れば少数派。
今も国内の自治体や業界からカジノ開設要望の声が強い。
カジノ法案も早晩議論される予定とのこと。
東京、大阪、沖縄あたりが候補とか。
「震災復興の為に」と言えば向こう受けもするだろうととの思惑もあり
仙台にも、と検討されているようだ。
しかし今回の事件により、日本でのカジノ開設が遠のいた事は間違いないだろう。
ネクスト経済研究所
斉藤 洋二
山の章 6