生保中間決算
生保8社の中間決算が出た。
税務処理などは3月末の本決算においてなされる.
中間決算は、年度途中での、営業および資産運用の中間報告と言った位置づけである。
報告された内容は、販売も資産運用も共に、運用の困難性を映したものだった。
特徴は次の2点である。
1.販売状況
一時払い終身保険が銀行窓口を通じて良く売れた。
これは、個人が運用難に直面していることの証左。
団塊世代が、受け取った退職金の運用先に苦慮しているようで、
この貯蓄性の高い商品を集中的に購入した事が主な背景。
2.資産運用
欧州危機が市場を直撃し、円高、株安が進んだことを反映し、
資産の運用成果については厳しい状況となった。
「変額年金」の準備金が目減りしたり、株式売買による損益である
「キャピタル損益」が悪化した。
因みに、欧州5ヵ国への投融資残高だが、日本が4900億円、第一1600億,明治1200億円。
多額であるが、現在急速に残高を圧縮しているようだ。
各社ともソルベンシーマージン比率も高く、現状問題ないようだが、
今後の運用環境、とりわけ欧州危機の行方が、生保の経営にとって最大の不確定要因だろう。
ネクスト経済研究所
斉藤 洋二
林の章 4
自然災害
過日、損害保険大手3社の平成23年度中間連結決算が出た。
特徴は自然被害による大幅減益。
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」と言うだけに、既に記憶も薄れたが、
この秋、台風12号、15号が列島を縦断した。
これらの被害に関する保険金の支払いが、利益を圧迫したようだ。
さらに、タイの洪水で400社以上の日系企業が被害を受けている。
早晩、これらの企業に対する保険金の支払が予想され、
損保各社は通期の業績予想を下方修正した。
因みに、その額は、NKSJが300億円、東京海上は1000億円、
MS&ADは1300億円の保険金支払額を見込んでいる。
地震・津波は免責になっているが、その他の自然災害については
支払対象となる。
昨今のように、旱魃と洪水など自然災害が、世界中で発生すると、
保険会社の経営は厳しくなる。
更に、こちらは自然災害ではないが、欧州の各国国債を
保有していることから、有価証券評価損も発生も予定されている。
いまどきのマーケットにおいて,資産の効率的な運用は難しい。
天災、人災が渦巻く時代、 損害保険の経営環境は厳しい。
ネクスト経済研究所
斉藤 洋二
林の章 3
読売巨人軍
日本シリーズを間近に控えた、11日。
巨人軍・清武英利代表が、同・渡邊恒男会長を告発した。
渡邊氏においては、コーチ人事に関する独断が目に余るとのこと。
会社が組織決定した岡崎氏ではなく、江川氏の起用に動いた事は、会長の独断であり、
大王製糸やオリンパス同様、コンプライアンス上(法令順守)の問題がある、との論拠である。
上記の申し出について問題点が以下3つある。
1.渡邊氏には法律上の問題がないこと。
従って、コンプライアンス(法令順守)ではなく、あくまでガバナンス(企業統治)の問題である。
2.この問題は、社内人事上の問題に過ぎないこと。
球団・取締役がその措置に不満があるとして、対外的に記者会見を開き
上司の批判を行うことについて、果たして正当性があるのか疑問である。
3.この問題が、日本野球界の総仕上げである日本シリーズの直前に発生したこと。
12社により構成されている業界において、タイミングが余りにも悪い。
(業界やファンにとっての)公益上の観点から、そのタイミングを考慮すべきだった、こと。
「清武の乱」といわれる本問題だが、勝ち目も無いし、正当性も疑われる。
とは言え、日々我慢を強いられているサラリーマンとしては、
上司に一人立ち向かう姿は共感を呼ぶ。
日本シリーズも終わり、ストーブリーグ開幕。
所詮巨人の内紛であるが、徹底的にやってもらいたい。
スポーツ紙特に「報知」や、週刊誌の売れ行きが伸びるだろう。
ネクスト経済研究所
斉藤 洋二
山の章5
欧州危機
先月26日、ブラッセルの欧州首脳会議で
ギリシャへの対応が話し合われ、包括策が合意されて僅か3週間。
民間債務半減、EFSF増枠、などによりユーロ危機への
対応がなされたはずだったが。
その日を境に、ギリシャ問題はイタリアに飛び火した。
イタリアでの新内閣発足への期待も数日ももたず
市場は再度売りを加速。
国債金利は、イタリアでは危機水準の7%越え。
またスペインでも6%台へ、と追随して上昇した。
「地中海クラブ」と南欧諸国は揶揄される。
国民気質の違いにより、アルプス以北と南部とは財政感覚が違う、
南欧は特別だ、との見方が存在した。
しかし、事は南欧に止まらなくなった。
仏さらにはオランダ、ベルギーの金利も上昇している。
独仏の二度の大戦を経た経験を踏まえ、欧州の恒久の安定を目指して
スタートした欧州統合。
今や、欧州危機の危機は寸刻を待たず世界経済を直撃する。
ユーロが発足して12年。いよいよ正念場を迎えた。
ネクスト経済研究所
斉藤 洋二
山の章5
復興債
東日本大震災から8ヵ月。
ようやくその資金手当ての目途がついた。
即ち、11兆円の復興債発行にあたり、その主な償還財源である
所得税増税の期間を25年間にする事となった。
この間、資金負担について、現在の世代で負担するか、
次世代まで先送りするか、との論争があった。
震災直後は直ちに、自分たちの手で、との世論が盛り上がった。
これを受け、民主党は、数年、長くとも10年で償還、との意欲を示していた。
一方で、議論が長引くうちに、人々の気持ちが薄れた。
数百年に1回の災害でもあり長期に返済すれば良い、
との自民党などの意見が強まった。
結局その議論を経て、中間値として2世代25年で、との折り合いがついた。
またしても、借金のツケを次の世代に送る事となった。
今回の臨時税制度のモデルは、かつての東西ドイツ統一の
コスト負担の為に作られた連帯付加税にあったようだ。
この税制は「臨時措置」として導入されたはずだったが、
課税は、23年後の現在でも続いている、と言う。
ツケの先送りについては、少し割り切れないが、
25年は妥当な落としどころだったのかも知れない。
ネクスト経済研究所
斉藤洋二
風の章 4
オリンパス
オリンパスに1000億円規模の損失隠蔽が発覚した。
90年代後半、「飛ばし」などによる粉飾決算で山一証券が破綻したが、
それを彷彿させる事件だ。
この間、時価会計制度に変更され、企業統治についても意識改革がなされたはずだったが。
今頃になって、20年前も遡るかもしれない損失隠しが出てくるとは。
3代に亘る企業トップが絡んでいた可能性も示唆されている。
3年前の英国子会社の買収にあたり、総額600億円以上の助言手数料の支払い。
その不自然さから言っても、会社ぐるみでやって来た、と思わざるを得ない。
取締役、監査役は全く機能していなかったようだ。。
監査人も数年前に、KPMG-あずさから、Ernst&Youngー新日本へ移行
した経緯も不自然。
現社長は「昨日知った」などと発言。
しらじらしく聞こえるが、関係者数人を処分して幕引きを図っているようだ。
ガバナンスは如何になされていたのかが、詳らかにされるのを望むのは
国内外を問わず、投資家始め皆が望むところである。
自浄作用を、期待するのは難しいかもしれない。
とすれば、特捜、FBIなどの司法当局に任せるしかないのだろう。
日本の証券市場の発展の為にも、是非真実を明らかにしてほしい。
ネクスト経済研究所
斉藤 洋二
山の章 4
TPP
「環太平洋経済連携協定」。
ヒト、モノ、カネ、サービスの移動の完全自由化を目指す。
実態は米国が、、APEC9か国で自由経済圏の創出を図り、
国内の雇用を増大する目的で旗を振る。
日本の参加については、国内で議論が沸騰する。
しかし輸出立国の日本が世界の趨勢から取り残されるわけには行かない。
「TPP参加」しか選択肢は無いはずだ。
スケジュール的には、今秋に協定の合意、そして2015年に関税の完全撤廃を目指す。
日本は、今月12日のAPEC会議で最終回答をする事、となっている。
この回答を前に、民主党を中心に、輸出企業VS農家の対立軸で、
議論が行われている。
日本国内では、TPP参加により、貿易量の増大効果は3兆円、と内閣府が試算。
一方で、農林漁業へ8兆円の被害が見込まれる、と農水省が言う。
果たして農業は壊滅的打撃を受けるのか?
農業従事者の平均年齢は年々上昇し、今や66歳。
小規模で高齢化が進む農家において、既に海外との競争力はない。
今後の農業再生に向けては、TPPとは関係なく、根本的な議論が必要となっている。
今回のTPP参加反対の議論においては、そもそもが、
農家に対し現在支給されている「戸別所得補償」の増額が狙いだ、と言われる。
結論は,今月11日に「所得補償増額」で落ち着くのだろう。
もともとこれまでの議論が、農林業が「所得保障費増額」を目的としたものだった、とも言われる。
TPP問題は,当初よりそんな茶番劇だった、とは思いたくないのだが・・・
ネクスト経済研究所
斉藤 洋二
山の章3
円売り介入
10月31日(月)、円相場は75円台前半へと、史上最高値を更新。
これを受け、政府は79円20銭まで円売り介入を続けた。
推定介入金額は8兆円。現在は78円台前半。
大小の輸出企業からの悲鳴に、財務大臣はこの2ヵ月、
国際会議の場で円高に苦しむ日本の窮状を訴え、協調介入を要請してきた。
ただ目下の国際金融のテーマは「欧州の財政危機」への対応。
どの国からも円高とは認められず、協調介入への賛意は得られなかった。
どの国も、国内景気の停滞を受け、輸出を促進する為にも、
自国の通貨を切り下げたい誘惑にかられる。
しかしこれは近隣窮乏化策と言われ,安い商品を輸出し他の国の経済を疲弊させる。
国内の不景気を海外へ伝播させることになり,禁じ手と見られている。
現在の為替レートが円高かどうかについては議論が分かれる。
例えば購買力平価説によるビッグマック価格の比較で言うと
77円が適正レートになる。
現在の円高については、日本経済、株式市場が海外から評価されて、
と言う訳ではない。
あくまで、ユーロ、米ドルの避難通貨として、消去法の結果
円買いが強まっているのである。
欧州情勢は引き続き不安定、
米国は景気後退を受け金融緩和の見通しが強まっている。
円買い介入の続行も欧米諸国が良い顔をしないだろう。
輸出企業が期待する85円水準はとてつもなく遠い。
ネクスト経済研究所
斉藤 洋二
風の章3