ネクスト経済研究所|国内外の経済・政治・社会の方向性を洞察

カテゴリー

カレンダー

2017年3月
« 2月    
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

円相場のフェアーウエーは

2017.02.18 20:52

先週末ワシントンで日米首脳会談が行われ、さらにフロリダで両首脳はアーニー・エルスを交えてゴルフを楽しんだ。二人のゴルフの腕前は、大統領はドライバー280ヤード、ベスト66、ホールインワン5回とプロ並みだ。一方首相はベストが80台、アベレージは90台後半当たりのようだが、今回に備えて相当準備したとも伝わる。まさかこの27ホールに渡る日米のゴルフ対決において、ドル高・ドル安のどちらかが争われたわけではないにしても、米国の圧勝となったのは明らかだ。

 

ともかく懸案の通商・為替問題は余り話し合われた様子はなく、今後の経済対話とくに為替については財務相間での協議に委ねられることになった。財務長官に就任したムニューチン氏はドル高がウォール街にとり重要との考えを有していると言われるが、70歳のトランプ大統領が長年のビジネスで得た「ドル高が米国労働者の職を奪っている」との信念を変えるとも思えない。今後の貿易不均衡是正に向けてのトランプ政権の対応が注目されるところだ。

 

したがって円相場は、2016年に120円と100円の間で大きくスイングしたが、目下の円を巡る環境も、①原油価格が50ドル程度で安定していることや、②日銀はYCC(イールドカーブコントロール)を優先させることに専念し新たな追加緩和策を打ち出す可能性も乏しいなど、中立的で動きづらくなっている。

 

このように少し手詰まり感が出てきた相場の今後を占う上で手掛かりとなるのが購買力平価(PPP)だ。現状はと言えば、消費者物価ベースでは約128円、輸出物価ベースは約73円、企業物価ベースは約98円と言われている。輸出物価ベースが円相場の指標として最も適切かとも言われるが、百歩譲って企業物価ベースの98円前後がその中間値として妥当な水準と考えて良いのかも知れない。したがってこの水準を中心に10%程度の範囲で相場が動くと仮定すれば、円相場は88円~108円がゴルフに言うフェアーウエーというところではないだろうか。

 

つまり現状はフェアーウエイをはずしたラフとも言える110~116円範囲でのボックス的な動きが続くと見られる。しかしその次の局面は、目下主要6通貨に対するドル指数が14年ぶりの高水準にあることや米国景気の拡大もピークアウトが近いことなども考えあわせれば、フェアーウエーのセンター、つまり98円方向へと円が上昇すると考えて良いのではないだろうか。

コメント・ピンバック:0
このエントリーをはてなブックマークに追加

米中関係の行方

2017.01.22 13:52

1月20日にトランプ氏が第45代米大統領に就任した。すでに市場では昨年11月から大型減税とインフラ投資を柱とする経済政策への期待に、ニューヨークダウ平均株価は、18,000ドル水準から2万ドル水準へ、また10年物国債金利も1.8%水準から2.6%水準へと急上昇した。また為替市場でもレーガン大統領時代の強い米ドルが連想され、円相場も100円水準から一時120円が視野に入るに至っている。このようなトランプラリ―は、市場が「期待を先取りする」という性格を有していることを反映したものであり、政権が打ち出す具体的施策を見るにつれその期待がしぼんで行く可能性が高い。

 

とくに指名承認公聴会で政権内不一致が垣間見え、さらに共和党自体がトランプ大統領と一枚岩ではないことから、さまざまな局面で議会とホワイトハウスの間で対立が生じる可能性があることから政策実現の不確実性が高い。とりあえず政権発足直後の100日、つまり4月末までの期間がその試金石となるだろう。

 

このような環境下、最も気になるのが米中関係の行方だ。トランプ政権の根幹に親ロシア、反中国が据えられ、また保護貿易主義が追求される見込みである。すでにメキシコ、日本と共に為替操作国として中国を名指しで批判しているように、今後保護貿易主義を掲げて製造業の国内回帰が図られることになる。さらにその延長線上で米ドル高是正への動きが強まる可能性も捨てきれない。目下のところトランプ大統領と財務長官に指名されているムニューチン氏の意見は分かれているが、今後どのように収斂されて行くのか注目されるところだ。

 

また米通商代表部(USTR)代表のライトハイザー氏と共に、大統領補佐官にも対中強硬派であるナバロ氏が任命されたことからも中国に対する厳しい政策が注目されるところだ。実際トランプ大統領は選挙直後に祭英文台湾総統と電話会談し、「一つの中国になぜ縛られないといけないのか」との疑問を呈し、台湾を中国の不可分の領土とする原則の見直しに言及している。中国は目下のところトランプ政権の出方を静観しているものの、チベット、ウイグル、南シナ海などと共に台湾を「核心的利益」としているだけに、台湾問題において一歩たりとも譲歩するとは考えられない。したがって米中両国間の対立関係は軍事外交に止まらず人民元安や貿易不均衡問題を巡って一気に深まることになるだろう。つまり2017年の金融市場の最大の注目材料は米中関係であり、とりわけ為替政策の行方になりそうだ。当然メインターゲットは人民元となるとしても円も影響を受けることは必至だ。主要6通貨に対するドル指数でも見ても現在の水準が14年ぶりの米ドル高であることからも今後の下げ余地が大きい点は要注意だ。

 

 

コメント・ピンバック:0
このエントリーをはてなブックマークに追加

2017年の予測

2016.12.26 21:26

2016年も残すところ僅かとなった。年初120円で始まった円相場は100円割れを見たが、ほぼスタート時点に戻っての越年となりそうだ。結局今年は、6月のブレクジットと11月の米大統領選に振り回される一年だったと言うことだ。

 

この2大イベントが世界に与えた衝撃は、第二次世界大戦後定着していたグローバリズムが否定されたこと、そしてポピュリズムがエリートによる既成政治を飲み込んでしまったことだ。さらに、ふたつとも大方の事前予想がはずれたことが特筆される。とりわけ一流のメディアが予想を外したことは、メディアの限界と責任論にまで及んだ。特に世論調査に対して人々は本音を隠す傾向があることが明らかになった。実際建前として民主主義の観点からクリントン支持を述べていたのに、本音では高所得者への減税を約束するトランプを支持していた人が多くいたことからも、この種の調査の限界が分かった。

 

そもそも予測というのは人の心を読みとくことだが、人の心が変わりやすく、また建前と本音を使い分ける傾向があることからも、予測することの難しさが改めて浮き彫りにされた。とはいえ、予測の始まりであるアテネのデルポイの神託のご託宣が世の中の方向を指し示してきたように、今後も心を澄まして数々の予測を冷静に判断する必要があるだろう。

 

このように予測の難しさを嫌と言うほど知らされた2016年ではあるが、TIME誌は「Person of The Year」にトランプ氏を選んだ。過去にはキング牧師やエボラ熱と戦う医師団が、他方ヒットラーやプーチンが選ばれてきたものだ。トランプ氏がどちらのジャンルの代表で選ばれたのかは知らないが、2017年もこの人が相場の主役となるだろう。つまりトランプラリーが当面続くのだろうが、その転換点がどの水準で、何時になるが当面の注目材料であり、期待がはげ落ちた時の反動はかなり大きなものとなるだろう。

 

しばらくドルの売り場を探す展開になるが、注目される材料は、何といっても政治的脆弱性に晒されている欧州だ。すでに反移民と反EU感情は、ポピュリズムと手をつなぎ、欧州政治を席巻しようとしている。実際イタリアでは憲法改正が否決され、3月はオランダ総選挙、4~5月はフランス大統領選、9月はドイツ議会選挙と続く。このようにEUの主要国は政治日程が目白押しで、メルケル独首相も盤石とはいえない雲行きだ。欧州の一年後の首脳の顔ぶれがどのように変わっているか見えないのと同様に、EUがどのような姿になっているのか定かではなくなった。この欧州の動きが2017年のトランプラリーの足かせになることは間違いないだろう。

 

コメント・ピンバック:0
このエントリーをはてなブックマークに追加

トランプラリーの次に来るものは?

2016.11.22 20:36

トランプ大統領が誕生し10日。直後こそトランプリスクへの懸念から相場は急落したが、その後一転してトランプラリーとなり、ドル円相場はほぼ10円急伸した。この背景は、「トランポノミクス」つまり減税による財政拡大と雇用増大への期待が独り歩きしていることがある。さらにトランプ氏が2010年に成立したドッド・フランク法(金融規制改革法)を廃止する意向を示していたことも大きく作用している。これにより金融界は金融危機以前のように何でも自由にできるとの期待感が高まり、さらに財務長官にJPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOやゴールドマン・サックスのムチナン氏と言った具体名が取りざたされるに連れて、ウオール街に安心感が広がっていることも影響を与えている。このように金融市場は大きな期待感に包まれているが、果たして夢見心地はいつまで続くだろうか? ご祝儀相場の次に訪れるのは、やはりドル高への懸念、金融危機再発の恐れそして安全保障体制への不安などの現実であり、相場は不確実性を増すのではないだろうか。

 

2016年は、英国のEU離脱(ブレクジット)と米大統領選の1年だったと言えよう。この行方を巡って金融市場は大きく振幅したが、この二つのイベントが残した教訓は、戦後70年に渡るグローバリゼーションとエリートがけん引する既成政治が大きな曲がり角に立っているということだ。そもそも自由貿易主義の利点を主張したのは、18世紀に「諸国民の富」を書いたアダム・スミスで経済成長をけん引するとした。またデビッド・リカードも、自由貿易を進めると各国で最も優位な産業の生産性が高まり、国際的な分業が進むとした。つまりこの「比較優位論」が実現される世界は合理的かつ効率的な成長を実現すると唱えたのである。このような学説と1930年代のブロック経済による第二次世界大戦勃発に至った事実への反省によりグローバリゼーションが進んできたが、これからはどうなるのか。TPP(環太平洋経済連携協定)が漂流し、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)の時代が幕開けする可能性が高い。米国が主導した現代のパラダイムは今大きな転換点に直面し、中国が牽引する世界が始まるかも知れない。しばらく、トランプ政権の現実的な対応、そしてその実体を見極める日々が続きそうだ。

 

このように金融市場はユーホリア状態となり一部には120円説も飛び出している。しかし筆者は、円相場のフェアーウエイは95円―105円との考えを変えていない。したがって目下ドルを売り上がり、相場の自律調整を待つつもりでいる。相場の調整が入る時期については、早ければ年内にも、そして遅ければ1月20日の大統領就任から100日の蜜月期間の終わり、つまり4月末ごろになるかも知れない。

 

コメント・ピンバック:0
このエントリーをはてなブックマークに追加

鬼が笑うかも知れないが

2016.10.22 16:21

11月8日に投開票が行われる米大統領選があと2週間と迫った。ヒラリー・クリントンおよびドナルド・トランプ両候補は3度にわたるTV討論会を終え、クリントン氏が8-10ポイントリードしたまま最終盤に入った。とりわけアイオワ大学が運営する電子市場の一つである「大統領選先物」などによるとクリントン氏勝利の確率は80-90%を超えており、トランプリスクは薄れたと言ってよさそうだ。したがって市場はすでにその重石から解放されたようで、原油価格や米金利の上昇期待も相まって9月末の100円台から104円台へと上昇しさらに上値をうかがう。果たしてこの相場はトレンドとなるのか。筆者は大統領選がドル高のピークではないかと思っているのだが。

 

今後の円相場を取り巻く材料の中で最も注目されるのが為替需給だ。日本の経常収支は15年の16兆円に続き16年も1―8月は前年を上回るペースで推移している。このドル余剰感が年初来の円高を後押ししており目先変化の兆しはない。その中で今後の需給を左右するのは原油価格の動向で、石油輸出国機構(OPEC)による増産凍結合意やロシアの減産に対する姿勢だ。しかしこのような減産枠組みが実効化されるのかは現状不透明であり、NY原油(WTI)も50ドル水準を大きく上回る上昇は読みにくい。

 

次に注目されるのが年金を始めとする機関投資家の動向だ。ドル円が下落し100円割れを伺うたびにGPIF、ゆうちょ、かんぽなどによる介入モドキの大口の円売り注文が観測されている。ただし各投資家ともにポートフォリオ調整も進んだ現在ではドル買い余力は限定的であり、一過性の需給攪乱に止まることになるだろう。

 

そして3番目に注目されるのが日銀の金融緩和政策だ。総括検証においてその柱を量から長期金利操作へと移した。つまりETFによる株式市場に続いて長期国債市場をも支配しようとの試みだが、要するにこれまでの期待に働きかけることによる通貨安誘導の限界性を認めたと言うことだ。換言すれば、レームダック化が囁かれ始めた黒田日銀には、初期のような円安・株高を再現させるようなことはもはやできないと言うことだ。

 

以上述べてきたように原油価格の急上昇により為替需給のタイト感が創出されない限り一方方向での円安は読みにくい。つまり当面の円相場は100-106円でボックス相場を継続し、次の段階ではブレクジット直後につけた98円台の下抜けを目指すのではないか。さらに来年の話をするのは少し早くて鬼に笑われるかも知れないが、2017年は90円台定着の年となるのではないだろうか。

 

コメント・ピンバック:0
このエントリーをはてなブックマークに追加

秋の大波乱には要注意

2016.09.29 15:02

秋の金融市場、特に9月中旬から10月にかけての為替市場、株式市場はこれまで荒れることが多かった。実際9月15日(2008年)にリーマン・ショックが起き、9月16日(1992年)はジョージ・ソロスが英ポンドを売りつぶして英国がERMから離脱することになった。そして9月22日(1985年)はNYでプラザ合意が行われ翌23日から円高の大相場が始まった。さらに10月に入ると、19日(1987年)は「ブラック・マンデー」つまり株価が20%以上も大幅下落した日である。そして24日は「暗黒の金曜日」(1929年)を皮切りに大恐慌が発生した。なぜ秋に大波乱が起きるのかについては紙幅に制約があり詳しくは書けないが、ともかく現在は一年でも最も注意せねばならない時期に差しかかっていることだけは頭の片隅においておいても損はないだろう。

 

しかし実際の相場はといえば恐怖指数(VIX)が20を割り込んでいるように、NY株式市場は1万8千ドル台の高値水準で安定推移し、また為替市場を眺めても円の変動率は低水準にある。この背景には日銀の「総括検証」と連邦公開市場委員会(FOMC)を前にしていることがある。だからと言ってまったくの無警戒では足元をすくわれる可能性がありいつもながらに「常在戦場」の戒めを忘れるわけにはいかない。とくにABCDリスクと言われるようにA(米国の利上げ)B(ブレクジットのその後)C(チャイナ)には当然注意が必要だ。さらにD(ドイツバンクの経営懸念)が万が一表面化した場合の世界の金融機関への波及にはくれぐれも留意しておく必要があるだろう。

 

ところで21日の日銀金融政策決定会合後に行われる日銀発表および黒田総裁の記者会見においては、2%インフレ目標未達の原因の分析と同時にマイナス金利の深堀や長期国債の買い入れ額の弾力化など緩和強化策が発表される可能性が高い。現状その具体策は想像の域を超えないが、その発表の市場への影響については2円程度の円安の振れは織り込んでおく必要があるだろう。逆に追加緩和策が見送られた場合は3円程度の円高になる可能性がある。一方22日未明に予定される米国利上げについて9月は見送りとなる公算が高い。つまり21~22日は一時的に円安へ振れることがあっても再度円高のトレンドが明確になるのではないだろうか。つまり今週は103-105円レンジで売り上がる戦略をとることとし、100円割れではしっかりと買う戦略が有効か。ともかく秋のアノマリ―には要注意だ。

コメント・ピンバック:0
このエントリーをはてなブックマークに追加

リオから東京へ

2016.08.26 14:12

リオ五輪も最終盤となったが、現在の日本のメダル獲得数は金12銀7銅21の計40で、金メダルは、柔道、レスリングなどで積み重ねて東京、アテネの16に次ぐものとなったが、記録更新は次回東京大会のお楽しみになりそうだ。この各国のメダル獲得数については開幕前からメディアはそれぞれの予測を挙げ精度を競ってきた。そんな中でゴールドマン・サックス社もスポーツは投資効果を反映するとの前提に基づき、経済力、人口、ナイキの靴の価格などをベースに各国の獲得メダル数を試算していた。この考え方は普遍化しており実際日本もスポーツ庁を設置してスポーツ大国を目指し、官僚の頭脳と税金で国威発揚を図る。メダル数が増えるのはまんざらではないものの、この作戦に違和感を覚えるのは筆者ばかりではあるまい。

 

ともかく半世紀余り前の東京五輪において、開催数年前から東海道新幹線の突貫工事が行われ加えて発電所、製鉄所、高速道路などのプロジェクトも世銀ファイナンスにより進められた。おかげで伸び盛りの国は急成長を遂げたが、次回の東京五輪に向けて夢をもう一度とばかりに政府が様々にカネをつぎ込もうとしている。アベノミクス三本の矢、そして新三本の矢がともに不発に終わった今、先日28.1兆円に上る経済対策が打ち出された。その中身は「未来への投資」と銘打ちリニア新幹線大阪延伸の前倒しなども含まれているが、実体は旧来型の公共投資とバラマキ。公共投資は所詮需要の先食いであり、その経済効果は一時的であることは 誰もが知るところだ。果たして夢の再来を狙った大型投資がデフレ不況に悩む日本経済を救済することができるのか、やはり疑問と言わざるを得ない。

 

このリオから東京へと熱気がリレーされる中で打ち出された経済対策に対して金融市場の反応は冷めたまま。円相場は円安に振れるどころか100円前後で円高基調が続いており、夏休みが終わった今注目されるのはどこまで円高が進むのかという点になる。ドル下落場面で出される「市場を注視している」との財務省高官コメントや財務省、日銀、金融庁による三者会合も半年もパフォーマンスだけではまさに張子の虎だ。米国の手前打つ手もあまりなさそうだがさすがにそろそろ何かやるかも知れない点だけには注意をしておくのに越したことはないだろう。当面は日米金融政策の不透明感も強いだけにドルの下値は限定的で98円―103円レンジのボックス相場ではないだろうか。100円割れはしっかり買い下がりたい。

 

コメント・ピンバック:0
このエントリーをはてなブックマークに追加

ヘリコプター・ベンの置き土産

2016.07.23 20:32

ブレクジットによる市場大波乱から3週間が経過した。一時は英£の急落を見て市場は悲観一色となったが、欧米株価の持ち直しは速くNYダウが市場最高値を更新するなど市場センチメントは回復している。とくに英国では「鉄の女の再来」「氷の女王」とも言われるメイ新首相の下で新内閣が発足し英国情勢も落ち着きを取り戻しつつある。したがってリーマンショック時の6か月にわたり下値を模索するような可能性は乏しいと言える。ただしリスボン条約第50条に基づく離脱通知の時期も見えず交渉の進展が見通せないだけに二番底を探りに行く可能性さらには円買いの再燃について今後も一定の注意を払う必要があるだろう

 

とはいえ円を取り巻く環境については参院選以降改善が進んでいる。とくに100円割れを視野に入れた後の円の切り返しおよび世界でも突出してパフォーマンスの悪さを示していた東京株式市場の回復が目覚ましい。「野も山も皆弱気なら阿呆になりて米を買うべし」との本間宗久翁の言葉通りの展開となったが、その背景にはヘリコプター・ベンことバーナンキ元FRB議長の来日と安倍首相そして黒田総裁との面談があった。もちろん具体的な話の内容は明らかではないが、従来からヘリコプターから現金をばらまくようにマネーストックを増やす景気対策を持論とする同氏だけに、積極的な政府の財政出動そして日銀の金融緩和策を推奨したのではないだろうか。軽度のデフレであれば金融緩和で対処できるが、今のように世界でデフレが重症化する一方で通貨安政策への海外批判が高まる中では国内で完結できる財政政策が有効である。したがってヘリコプター・ベンに後押しされて安倍政権は日銀のマイナス金利政策による空前の低金利で資金調達できる環境を生かして日銀引き受けを積極化させることを考えているに違いない。ついてはその手始めとして、リニア中央新幹線の大阪延伸前倒しなどインフラ整備を骨子に10兆円程度の補正予算を進めることになるだろう。

 

すでにアベノミクスも3年半を経過し、その言葉も色あせて成長戦略もかすむ状況下デフレギャップを埋めるためには財政投資と金融緩和策のポリシーミックスの出動を推し進めるだろう。ついてはヘリマネによる財政出動に加えて7月28、29日の日銀金融政策決定会合でのマイナス金利の深堀とETFやREITの買い増しなどの追加策が決定される可能性が高まる。したがって今年何度も見たようにその具体案が発表されるまでは日銀への期待感で円安地合いが継続し、そして具体案が出た段階で円高に転じることになるのではないか。つまり「噂で買って事実で売る」作戦が当面有効と思われ、105円ぐらいから売り上がりたい。

 

コメント・ピンバック:0
このエントリーをはてなブックマークに追加

サミット後の円高再燃に要注意

2016.05.23 13:39

仙台と山形を結ぶJR仙山線は広瀬川に沿って走り、新緑の美しさは秀逸だ。沿線にある秋保温泉の老舗旅館「佐勘」では、G7財務相・中央銀行総裁会議が行われた。テーマは租税回避問題、財政政策など多岐にわたったようだ。しかし最も注目された為替認識については、ルー米財務長官が秩序的だと繰り返したように、介入についてはこれまで同様行わないとの原則は不変だったようだ。つまり日本が2011年に行った70円台で10兆円規模といった(円売り)介入の再現見込みは当面乏しい。

 

一方伊勢志摩の英虞湾に面した「志摩観光ホテル」では5月26-27日にサミットが行われる。テロ対策はじめ様々なテーマが議論されるが、最も注目されるのは議長国の日本が前向きである財政出動に各国が応じるか否かだ。各国ともに成長率の底上げに従来から大筋合意しているものの、財政規律が厳しいドイツや英国が財政出動を積極化することについて同意しない見通しだ。したがって16年1-3月のGDPが1.7%成長を示したとはいえアベノミクスに息切れ感が強まる日本は、サミット以降ひとり消費税の延期やヘリコプターマネーと言われる積極的な財政出動など孤独な闘いを続けることになりそうだ。

 

このような環境下すでに市場では6月の日米の金融政策へと視点が移っている。6月14-15日のFOMCにおいて米利上げが行われる可能性は30%近くへと高まってきた。一方で6月15-16日の日銀金融政策決定会合における追加緩和政策実施を読む向きも増えている。これらを反映して、一時105円台まで上昇していた円相場は、再度110円台へと下落している。さらには円高から円安へとトレンドが変化したとの見方まで台頭している。

 

とはいえ目を欧州に転じればブレクジットを問う6月23日の英国民投票まで1か月となった。最近の世論調査では若干ながらも「残留」支持が「離脱」を上回っているが、その帰趨は目下のところ読めない。2014年9月18日のスコットランドの独立を巡る住民投票の際にも投票当日まで英ポンドを中心に為替市場が混乱したのは記憶に新しく、今回もその再現となるだろう。さらにこの間鳴りを潜めていたギリシャも夏場にかけ多額の融資返済期限が迫っており欧州危機が再浮上する可能性が高まっている。ついては英国民投票までの1か月、市場はより神経質となり円高の動きが強まるのではないか。さらに日米の中央銀行もその間動きづらくなるとすれば、その間隙をぬって再度105円に向けて円高が再燃する可能性は捨てがたい。

 

 

コメント・ピンバック:0
このエントリーをはてなブックマークに追加

ソロス氏の警告をどう読むか

2016.04.11 10:28

ジョージ・ソロス氏はブダペストに生まれ、米国に渡ってクォンタム・ファンドを設立して空前の利益をたたき出した著名投資家であることはいまさら言うまでもないだろう。第一線を退き「慈善家」とも呼ばれるようになった85歳の今でも、世界の金融市場に絶大な影響力を持ちつづけている。同氏はさる1月21日ダボスでブルームバーグとのインタビューに応じ「中国経済はハードランディングに直面しており、世界的なデフレ圧力の一因になるだろう」と警告し、「中国情勢悪化を考慮して、S&P500ショート、米国債ロングのポジションを保有している」と語った。中国共産党はこの警告に対し「ソロス氏の人民元と香港ドルに対する挑戦は成功しない」とする評論を掲載し、不安打消しに躍起になっている。ただ中国は資本流出による人民元下落に対し元買い介入を続けた結果、外貨準備高は大幅に減少し、不安心理はかえって高まることになっている。

 

ところでソロス氏は、リーマン危機直前の2008年に著書「ソロスは警告する・超バブル崩壊=悪夢のシナリオ」において金融危機を予測するなど、その慧眼そして勝負をかけるときの大胆さを際立たせてきた。哲学者でもある同氏の考え方を体系化した再帰性理論(リフレキシビティ)は難解だが、一言で言えば様々なリスクが共鳴し、実態経済に悪影響を広げるとの解釈が可能だ。具体的にはリスクAがリスクBに影響することによりリスクBがリスクCに伝播し、さらにリスクCがリスクAに再帰してくるとの過程を経てリスクは拡大してゆくとするもの。これらソロス氏の考え方を現在の金融市場にあてはめて考えれば、①米国景気、②原油安、③中国経済、④マイナス金利などについての不安がまちまちに存在している。これらのリスクが互いに共鳴しあって、その共鳴音が最も高まったときに市場の流れが大きくなるが、その共鳴音が高まった第一波が今年1月から2月にかけての円高加速だったといえよう。

 

そして問題はリスク共鳴の第二波が何時来るかだ。ソロス氏の警告の通り中国リスクが限界点に達し市場を飲み込んでしまおうとしていることは明らかだ。とはいえ4月の産油国による「原油増産凍結」に向けた会合を前に原油価格が下がりにくくなっているほか、日銀の追加緩和策への思惑、さらに5月には伊勢志摩サミットや参議院選挙を控えて総合経済対策が打ち出される可能性などが高まる。ということでリスクの共鳴による円高が進むのはしばらく先と考えるのが妥当ではないか。当面の円相場は110円から114円のレンジでの往来相場を想定し、下がればドル買い(円売り)、上がればドル売り(円買い)が機能するのではないだろうか。

 

 

コメント・ピンバック:0
このエントリーをはてなブックマークに追加

↑このページのTOPへ

ネクスト経済研究所ブログ「風の便り」