ネクスト経済研究所|国内外の経済・政治・社会の方向性を洞察

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十年一昔

2018.07.21 09:25

近頃の金融市場はAIやアルゴリズムが進化して瞬時に大幅変動が起きやすくなっているだけに、「十年一昔」さらに「二十年大昔」と言われるように月日の経つのが早くなった。今年はリーマンショックが起きた2008年9月からちょうど10年目の節目だ。したがって10年前の出来事が語られる機会が増えてくるのだろう。そんなおり日銀は10年前つまり2008年1~6月に行われた金融政策決定会合の議事録を公開した。それによれば6月時点つまり金融危機発生の直前において前年に発生したサブプライムローンの破たんについて全く警戒をする素振りもなく、「全く影響はない」と白川総裁が断定し金融危機への備えなど議論されることなどなかったのである。ことほどさように危機発生前というのはいつも泰平の空気が満ち溢れるようで、当時の金融市場も原油価格が7月11日に147ドルの史上最高値に達するなど世の中リスクオンの気配が横溢していたのである。

 

その後のリーマンショックの惨状は今更詳述するつもりはないが、6000ドル台、6000円台まで日米の株価は急落したが、その後10年で26千ドル、24千円を回復するなど右肩上がりが続いて今日に至った。この背景には非伝統的手法による金融緩和策に加えて、アップル、アマゾンなどに代表されるネット関連企業の成長がある。さらに「のど元過ぎれば熱さを忘れる」の諺の通り金融改革法案の骨抜き化など再び金融市場に投機熱が高まってきたことがあるだろう。とはいえ金融市場は1987年のブラックマンデー、1997年のアジア通貨危機、2007年のパリバショックと10年に1度忘れた頃に金融危機が発生しているのである。この10年周期の大波乱について2017年は何事も起こらずに済んだが、だからといって今後大小問わずショックが起きないとも言えない。

 

目下米中貿易戦争は報復関税の応酬が続いているが、米国経済の規模からすればその影響は軽微、そして中間選挙までに手打ちが行われるのに違いない、などとの楽観的見通しが支配的となっている。とはいえ米国よりも経済規模が小さくさらに金融市場の底が浅い中国では市場ではすでに異変が観測されている。人民元は年初の6.2台から6.7台へそして上海株も3500から2800へと2割ほど下落している。このように3年前に発生した「人民元ショック」が再び起きるかも知れない点は要注意であり、現下のリスクオン相場の深追いは禁物ではないだろうか。為替市場には113円40銭の本年最高値を抜け115円を目指すとの強気の声が高まっているが、ここは売りで応戦するのが面白いのではないかと思っている。

 

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円相場下半期の見通しは?

2018.07.02 10:00

目下世界が最も注目しているのは米中貿易戦争の行方ではなく国家の威信をかけたFIFAワールドカップだろう。すでに開幕して1週間が経過したがどの試合も1点の重みを感じさせるものであり、まさに真剣勝負の厳しさこそがこの大会のだいご味と言うところだ。とりわけ強豪ドイツがメキシコに、そして南米の雄アルゼンチンがクロアチアに負けた試合など勝負の恐ろしさを教えてくれるものだった。ともあれサッカーに熱狂する日々がしばらく続くとしても為替市場に参加している限り常在戦場であることから逃れることなどできないし、時はまさに2018年の前半を総括し後半戦の戦略を練るタイミングと言えよう。

 

2018年の前半を振り返ると高値と安値の変動幅は9円。実際112円でスタートして104円台まで下落したものの111円に押し戻されるなど、行って来いの相場になっている。とくに4月以降貿易戦争が休戦状態になったことや米朝ユーフォリアへの期待感も高まったことが戻りの原動力になったが、同時に原油高の影響を受けて5月に6千億円の貿易赤字が計上されたように需給がひっ迫したことが大きく作用したと言えよう。このように為替需給については引き続き原油価格の影響を受けるが、OPECによる減産への足並みが乱れていることから、現状65ドル台の価格が70ドルを大きく超えて行く可能性が少なくなった以上今後不足感はさして高まることはなさそうだ。つまり今後米朝ユーフォリアへの期待感や原油上昇のはげ落ちを考慮する必要がありそうだ。

 

特に下半期の最大の要因は何かと言えばやはり米中貿易戦争の行方であり、同時並行的に行われる日米通商交渉を通じて日本たたきの再燃への懸念だ。もともと米中貿易戦争については米国経済の規模から見れば報復関税の応酬の影響は軽微だとの楽観的な見通しが支配的となっていた。しかしここにきて米国側が500憶ドルの輸入品への課税を決定し、それに対し中国も同額の報復関税を明らかにし、さらに追加的に2千憶ドル分の輸入品に制裁関税の検討を始めるに至り事態の深刻さが浸透し始めた。加えて鉄鋼・アルミで始まった報復合戦もいよいよ自動車へと飛び火する雲行きだ。

 

このように米中間で始まった貿易戦争が欧州、カナダ、メキシコへと拡大する中で、日本だけが例外扱いされるのではないかとの期待など禁物だろう。つまり2018年後半の相場は11月の中間選挙を前にしたトランプ政権の国内重視に翻弄されることになりそうだ。いよいよ円高の夏が始まるのではないだろうか。

 

 

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米中貿易戦争の行方

2018.05.23 09:32

米国が通商拡大法232条に基づき中国など対象国に対し 鉄鋼、アルミにそれぞれ25%、10%の高率関税をかけた。 さらに通商法301条に基づき知的財産に関する1300品目に ついても報復課税を行う見込みとなっている。 これに対して中国は対抗措置として報復関税を課す ことを打ち出しており、いよいよ米中は貿易摩擦から貿易戦争へ。 現状米中間ではこれを回避する対話が水面下で行われて いるようでもあり、またトランプの得意のブラフとの見方もあるが 実際のところ軟着陸は難しいのではないか。

 

もともと中国の石油、航空、金融など基幹産業はゾンビと言われ る国有企業が補助金を受けては生き延びて過剰生産を続けてきた。 現状国内経済が減速し、これらの生産財の国内消費は不可能となっており、海外での消費にドライブをかけている状況だ。 したがって一帯一路は格好の受け皿であり、くわえて米国へも大量の過剰生産物が流れており、米国において(トランプのいうところの)「世界史上で 最大の赤字」を産み、米国の企業を直撃しているのだ。このような報復関税の応酬が進むとそれぞれの輸入財の価格上昇に伴い 経済の減速から逃れられなくなり、貿易・世界経済の縮小、景気後退 がもたらされることになる。

 

このような貿易戦争の影響は直接間接に日本に強く及ぶ見込みだ。すでに日本では貿易戦争への懸念と円高の影響を受けて雇用市場も変調を来し、景況感の急速な悪化が顕著となってきた。それでは日本は景気後退に備えて打つべき手があるか?と言えば財政政策はすでに累積赤字が高い状況でその出動は無理。また金融政策もすでに緩和はこれまで一杯一杯で、もはや円高を抑えるべく 口先介入しかないのが実情だ。 ということで米国のジャパンパッシングを翻意させるべく4月17日の日米首脳会談に活路を求めているが、近頃の米国のスタンスは昨年来の晋三・ドナルドの 蜜月関係などまるでなかったかの様子。「外交」とは手を握り・見つめあうという恋人関係の延長線上にあるわけはないということだ。

(改革開放40年)

このところ米国の株価は日替わりメニューのように強気と弱気が交錯し、激しくアップダウンを繰り返している。とくに先週は米中貿易戦争の先行きに安心感が強まって上昇したが、週末には中国の報復に対してトランプ大統領が1千憶ドルの追加関税を検討するようにUSTRに指示をしたことから不安感が再び高まった。しばらくはこのようなやりとりが続くことになりそうで、予断を許さない。

実際米国では11月に中間選挙が予定されておりトランプ大統領も「中国製品に45%の関税を課す」との大統領選での公約を果たすことにこだわる。またその政権の陣容も、クドローNEC委員長、ボルトン安保担当補佐官ポンぺオ国務長官らがライトハィザーUSTR代表、ナバロ通商製造局長に加わって、対中強硬派および保護主義派の鉄壁の布陣となった。制裁発動までの猶予期間にムニューシン財務長官らが北京に入り対話を本格化させるともみられるがどのようになるのか不明。脅しだけのつもりが本当の喧嘩になったりすることはよくあるもので一寸先は闇だ。そして迎え撃つ中国は鄧小平が改革開放政策へと舵を切り高度成長を実現させて40年の節目。つまり中国は貿易のメリットは十分承知しておりトランプ主導の保護主義には随時反論してきた。とはいえ今回の報復合戦については売られた喧嘩は買うと言った趣旨を述べているし今後予断を許さない。3月の全人代では共産党の常務委員を退職した王岐山がよもやの国家副主席として中国の実質NO2となった。対米交渉でのその神通力に期待はかかるものの、「暗愚の帝王」トランプ相手では勝手も違うだろう。今後の米中の行方についてあまり楽観に傾いてしまうのは危険ということだ。

(劉鶴)

「米国第一」「保護主義」の道を突っ走る米・トランプ政権に対し、昨年のダボス会議以来自由貿易の旗頭となったのが中国の習近平国家主席だ。10日には海南省の国際経済会議「ボアオ・アジアフォーラム」で金融業などの市場開放を柱とする重要施策を公表。さらに米中貿易の不均衡について、「中国は貿易黒字の追求を目標としない」「知的財産権侵害を取り締まる」など「市場開放」と「黒字幅削減」を打ち出してトランプ政権への歩み寄りを示した。

ホワイトハウスは重要閣僚のリシャッフルが進みいまや対中強硬派で固められたが、一方の中国サイドは3月の全人代で国家副主席となった王岐山とハーバード卒である劉鶴が国務院副総理に昇格して舵取りをする。この劉鶴副総理は習近平とは10代の頃からの友人と言われ、中国共産党内では経済アドバイザーとして活躍し、過去40年にわたり中国の成長政策を担ってきた人。目下は投資と輸出重視の経済から、緩やかではあるが持続可能な消費中心の成長へと転換しようとする政策の中心人物ともいわれている要人中の要人だ。したがって今後の米中関係の行方を左右する人物であり、2月にもワシントンを訪問し、トランプ米大統領が凍結していた両国の通商協議再開のお膳立てをすると期待されていた。 ただこの時はトランプ政権が中国を標的にした鉄鋼・アルミニウムの輸入制限措置を発表したタイミングに当たった。つまりこの日を境に米政府が対中制裁の追加関税品目500億ドル相当の公表、中国側の報復措置、それに応じてトランプ氏が追加関税対象を1000億ドルまで拡大する意向を示すなど、対立はエスカレートするばかり。 したがって海南島での習主席の開放政策についての演説は効果的だった。今後の中国の対米経済政策が劉鶴副首相に主導されることは明らかであり、今後米中対話の進展が注目されるところだ

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金融工学発展の功罪

2018.02.20 15:40

アポロ13号が月面着陸をしたのが約半世紀前の1969年7月。これを機に宇宙への夢が世界中で広がったが1970年代後半に至り財政負担に耐え切れず中止になった。おかげで本来NASAに向かうべきロケットサイエンティストたちがウォール街に流入することになり、一気に金融工学が開花することになったのはそれなりの必然だった。

 

それ以降の金融市場の目覚ましい発展は知っての通りで、オプションやレバレッジの発展、そしてアルゴリズムさらにAIによる予測技術の日常化などその果実は数えきれない。とはいえその副作用として相場の大幅変動がもたらされたのも事実である。それがまさに2月2日(金)以降の世界の株式同時暴落である。同日発表された米国雇用統計に相場は上昇したが、それも束の間金利上昇が嫌気されて株価が反転。そしてそのハイライトは翌月曜日(5日)のNY市場の後場遅く。僅か数分の間に1000ドルを超える下落となり、その後半値戻し、またまた下落とup downを繰り返し、1日で1200ドルと史上最大の暴落となった。

 

このNY市場の荒れ相場にはアルゴリズムが大きく作用した。数学的に編み出された売買手法が起動してHFT(High Frequency Trading)つまり高速回転取引やストップロス取引が大量に執行された。これまでもアルゴリズムが相場の大幅変動の理由として指摘されてきたが、今回もまた同様と言うことだろう。ここ2~30年の金融市場はレバレッジが縦横に組み込まれているせいで上げ相場はより上がり、下げ相場では収縮がより加速化する。今回についても米国株に続いて米国債、日本株、そしてドル円と売りのオンパレードとなったが、そのきっかけは人間の判断で「人為的」な下げと言った感じではあったものの、その後の売りは「機械的」と言ったもので、まさに人の開発した金融的仕掛けが変動を加速させたと言えよう。

 

リーマンショックから間もなく10年。これまで右肩上がりに上昇してきた相場もトランプ大統領の一般教書演説での自画自賛が相場のピークを告げたのかもしれない。ここ数日は先行き不安も多少収まったようにも見えるが、相場の自律調整は株から為替へとその壁を越え、また米国から日本へと国境を越えて世界へと伝播しつつある。とくに円相場について言えば何よりもレパトリが目立つ季節であり為替需給に不足感は乏しい。しばらくは値ごろ感からのドル買い・円売りの誘惑に負けず円高の潮流に乗るのが得策ではないだろうか。

 

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既視感

2018.01.24 09:43

新年もすでに20日を経過したが円相場は113円台から110円台へと上昇しており2018年の大相場を予感させる展開が続いている。とはいえすでに10日間近く陰線が出続けてきただけにそろそろ110円を目前にして一服かとも思える。次週は調整場面と考えてよいのではないだろうか。

 

ところで相場格言では「申酉(さるとり)騒ぎ戌(いぬ)笑う」と言うが、今年は円安・株高のリスクオン相場継続とはいかないように思える。申年も酉年も新年から上海株や人民元の暴落さらには北朝鮮の核実験など東アジアリスクの台頭に迷走気味のスタートとなったが、戌年もまた中国発のニュースが相場を動かした。実際1月10日ブルームバーグは、中国が外貨準備の米国債への投資を減額もしくは停止することを検討しているとのニュースを伝え、米国債(10年物)の金利が上昇し円高も進んだ。(翌日中国政府はその報道は事実無根だとした。)このような情景に既視感を覚えたが、それは20年前に橋本龍太郎首相(当時)が「米国債を売りたい」と発言し物議をかもしたことである。この発言を機に円相場は116円から110円へと上昇したがやはり一見盤石に見える米国の経済システムも国際金融市場もいつ何時揺らぐのか分からないということだ。

 

この10年金融市場はリーマン後の非常事態を乗り越えるために非伝統的金融政策を推進してきたが、今年は如何にそれを脱し正常化を進めるかがテーマだ。米国については2月にパウエルFRB新議長が登場するが、基本的にはイエレン路線を踏襲するとみられる。一方新鮮味があり市場へのインパクトが大きいのが欧州および日本の金融政策の行方だ。ECBは明確に出口戦略へと舵を切っていることから、ユーロ高が著しい。続いて注目されるのが、これまで出口戦略を否定し不動のスタンスを貫いてきた黒田日銀の次の一手だ。過日日銀が超長期債の買いオペを見送ったことが一気に円高の流れを作ったように、今後日銀の実質的なテーパリングの進捗が市場の注目を集めては円高を後押しすることになるだろう。

 

その日銀では黒田総裁の任期が来る4月に満了となる。その後任に誰がなるにしても量的緩和策の「修正」が行われることになるだろう。つまり「大胆さ」を売りにした異次元緩和政策を何らかの形で収束させ、かつて政府筋から「しょぼい」と言われた穏健な緩和政策を行った白川時代のような政策運営へと回帰するのではないか。つまりこの5年黒田日銀が強引に進めた円安を軸とした金融政策が修正されるのだ。つまり今後の円相場を展望すれば「2018年の円高」は回避しがたい状況にあり、70円台から80円台を推移した白川総裁時代の既視感が蘇ってくるのである。

 

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2018年の円相場予測

2017.12.27 17:52

今年も残すところ50日余りとなり2017年の総括と18年の予測を行う時期に来た。過去30年を振り返ると1987年のブラックマンデー、97年のアジア通貨危機、07年のパリバ・ショックと10年周期で7の年には金融ショックが起きてきた。とはいえ世界の金余りが懸念されているものの17年の金融危機の可能性は薄れたと言ってもよさそうだ。

つまりそのリスクは年越えしたと言っても良いだろう。

 

今年の金融市場はと言えば、米国株(NYダウ工業株30種)が4千ドル近くも上昇し、さらに日本も経済成長がいざなぎ景気越えをするとともに株価(日経平均株価)も26年ぶりに2万3千円を超えた。一方ドル円相場と言えば、118円台の高値で始まった後はトランプ政権への不信に北朝鮮リスクへの不安が加わって下押しされ、結局107円から115円の間を3往復する一進一退が続くことになった。このまま越年すれば1年を通した変動幅は11円程度に止まり、また株価と為替の連動性が失われたことが特徴的だったと記録されるだろう。

 

目下のドル円相場は100円~120円ゾーンでの2年にわたる「大いなる安定」感が漂っており、手掛かり材料難である。あえていえばトランプ政権と米国の金利上昇への期待が相場を下支えし、現在の113円の相場はドル円再上昇に向けての踊り場との見方が多いようだ。しかし12年から15年にかけての3年間の70円台から120円台へのドル高はアベノミクスの影響と言われるものの、実際のところは原発停止にともなう原油輸入増大による貿易収支の悪化が為替需給のタイト化をもたらした結果と言える。したがって今後の相場についても為替需給の変化とりわけ経常収支黒字拡大傾向には注意が必要だ。

 

さらに米国の金利上昇への期待感がいつまで続くのかが相場を分けることになる。米国の長期金利(10年国債)については、過去1年2.1%~2.6%の範囲で推移し目下は2.3%だ。米国ではインフレ率が1.5%水準にとどまっている以上長期金利の上昇力はないのではないか。これこそFRBが政策金利引き上げに逡巡する理由でもあるが、今後2.6%の天井を抜いて3%へと接近するとは言い切れず、逆に下落でもすればドル円相場は大きく崩れることになるだろう。

 

18年は「大いなる安定」がいつ崩壊するか否かが注目され、案外予想もしない材料が切っ掛けとなり相場が不安定化する可能性が大きいのではないのだろうか。つまり107円を割り込んで100円に向かう動きに注目している。

 

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日本のリベラルとは何か

2017.10.25 17:46

総選挙終盤戦の世論調査結果を大手メディアが報じているが、態度未決定者が2割に上るだけにこの時点での予測の確実性には疑問符がつく。とはいえ各社とも獲得議席数を自民260、希望60、立憲民主(立民)50、公明30、共産20、維新10と予想しているだけに、どうやら自民堅調、希望失速、立民善戦と言うことで決着しそうだ。つまりブレクジットのような大番狂わせの可能性は乏しい見込みだ。

 

結局公示前に注目された小池新党への抱き付きと言う前原の捨て身作戦は失敗に終わりそうで、「言うだけ番長」の汚名返上には至らなかった。一方立民の善戦は、枝野人気と朝日新聞社の支援が大きく作用したものとはいえ、日本の「リベラル派」を自称する人たちが反安倍で結集した結果でもあるだろう。とはいえ 結局「リベラルとは何か」また「立民がリベラルなのか」について考えさせられるところともなった。自社による保守・革新の対決が続いた55年体制下においてリベラルとは自民党内における自国憲法制定・ 戦前の体制への回帰を標榜する勢力に対し戦後体制容認、対米協調、市場経済を重視する宏池会などを総称するものだった。ところが東西冷戦の終焉とともに行き場を失った左派勢力がいつの間にかリベラルを名乗ることになり、今や一時代前なら極左と言われたメンバーで構成された立民がリベラルの代名詞 を獲得したということである。

 

それでは海外事情はどうかと言えば、欧州におけるリベラルとは保守と左派の中間に位置する中道であり、それらを代表してきたと考えられるのがブレア、シュレーダー、マクロンと言ったところで、思想的には社会民主主義そして市場経済を重視する傾向が強いことが特徴と言えよう。一方米国に目を転じれば、小さな政府やキリスト教を重視する共和党など保守派に対し、大きな政府、人権保護のための政治介入そして環境保護などを主張するのがリベラルでありその政治的主体として民主党が位置づけられる。このように欧米のリベラルと比べると日本のリベラルはかなり左寄りと言ってもよいだろう。

 

どちらにしても自公が300議席に迫る可能性が高い現状、安倍一強政権は今後も続くことになるだろう。そしてこれまで同様の財政・金融政策が維持されることになるとともに、政府・日銀の二人三脚は次期日銀総裁が誰になるとしても継続されることになるだろう。総選挙の影響はすでに市場に織り込まれていることから与党勝利を受けた株高・円安の動きは一過性に止まるところとなるだろう。したがって今後の円相場は欧米と日本の金融スタンスの違いを映じた円売りと北朝鮮動向の不透明感の故の円買いの綱引きを続けながら新たな展開を待つことになるのではないか。当面110円から114円レンジでのもみ合いと考えている。

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秋相場の波乱に要注意

2017.08.23 20:16

今年も多くの市場関係者が夏休みからオフィスに戻る時期になった。それと重なるように8月24日~26日にワイオミング州ジャクソンホールで経済シンポジウムが開かれる。予定されるイエレンFRB議長やドラギECB総裁の講演は秋相場を占う上でいやが上にも注目されるところだ。米国の実態経済はこれまで10年間米国株価を下支えしてきたが、景気循環サイクルの終盤に入っている一方で、通常15倍~20倍が適正と見られる株価収益率(PER)も、アップルが150倍、S&P500が25倍に達するなどバブルの水域に入っているとの見方も強まりつつある。したがってこれまで続いた過熱感も不況感もない「適温経済」そして「適温相場」の終わりの訪れにはくれぐれも注意しなければならない。

 

FRBは2015年末から4度にわたり政策金利を引き上げているが、今後について大方の予想するところは、米連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれる9月に資産縮小が開始され、さらに12月には追加利上げが見込まれている。しかしFRBは物価や景気動向に確信を持つには至っていないようで、さらに追加的な経済指標を見極める方針ではないかと思われる。それだけに今後のFRBの金融政策の行方は大きく相場を左右しそうだ。

 

そもそも「適温相場」の語源である英国の童話「ゴルディロックス」では、主人公の少女がクマの留守の間に、ほどほどの熱さのスープを飲み、ほどほどの大きさの椅子そしてほどほどの硬さのベッドを楽しんだものの最後にクマが帰宅して逃げ出して終わる。この物語から学ぶべきことがあるとすれば、「適温相場」の大波乱のエンディングであり、そろそろクマの出現つまりベア相場への転換に要注意と言うことだろか。これまでも8月後半から始まる秋相場は往々にして波乱に見舞われてきた。実際過去30年を振り返ってもブラックマンデーによる大幅株安(1987年10月)、テキーラショック(1994年11月)、世界同時テロとドル安(2001年9月)、そしてリーマンショック(2008年10月)などその例は枚挙に止まらない。

 

秋相場の波乱材料としては、①FRBの金融政策の行方、②米朝間で威嚇と挑発が繰り返される北朝鮮問題、③トランプ政権内の足並みの乱れなどが挙げられる。どれがトリガーとなるにしても、株価および為替相場の大幅調整には十分注意を払うべきだろう。目下のドル円相場は110円を挟んだ動きとなっているが、徐々に上値が重くなっているように見られる。一方下値に関しては、4月につけた108円台LOW以外に目立った抵抗線もないことから、今後は108円割れさらに105円を目指す動きが強まる可能性が高い。

 

 

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北戴河会議

2017.07.26 22:28

7月後半になり世界はどこもかしこもバカンスだ。各国では首脳も議会もそして市場も休暇に入りつつあるが、中国でも河北省の海岸リゾート北戴河(ほくたいが)に共産党のトップそして長老たちが集まる。特に今年は10月に5年に1度の共産党大会が予定されており、その人事が話合われる北戴河会議が注目される。特に共青団を率いた胡錦濤や江沢民一派などが依然権力を有しており、今後の利権および共産党支配を巡り権力争いが激しさを増す。

 

もともと中国は共産党一党独裁の国であり、その党の指導の下で社会主義市場経済と言う理解を超える経済システムを組み込んで急成長を遂げた国だ。かつて鄧小平が「白い猫も黒い猫も鼠をとるのが良い猫だ」と言ったように、結果が伴えばそのプロセスは問わない。とくに14億人の人民を9千万人の共産党員が支配する体制が敷かれており、民主化が許されるはずもなく、共産党による強権政治が発動されている。したがって共産党員の間では権力争いは一段と激しくなり、腐敗と弾圧が横行するのも当然と言えよう。

 

そこで目下注目されるのが就任6年目を迎える習近平の後継争い。今回の共産党大会で5年後のポスト習が誰になるかが見えて来るだけにその行方が注目されるところだ。これまでの順調な昇進ぶりとその年齢から、胡春華と孫政才の争いと見られてきたが、孫政才が突如重慶市トップを解任された。ポスト習の芽はなくなったのは明らかで、今後どのような厳罰が待っているのか。そしてその後任には陳敏爾という習近平の最側近が就くことになりポスト習争いは一気に混沌化したと言っても良いだろう。とはいえ習近平は「ポスト習は習」と考えているようであり、紅い皇帝としてあと5年の任期はもちろんその後も院政を敷く腹積もりがあるようでもある。

 

そしてもう一人注目されるのが王岐山。党中央紀律検査委員会委員長として、反腐敗闘争で辣腕をふるってきた。68歳で定年を迎える予定だが、内規を変更して定年延長し習体制強化に向けもうひと働きするとのシナリオが囁かれる。歴史は夜、いやバカンスにこそ作られるもとすれば、やはり夏の北戴河会議から目を離すことはできない。北朝鮮問題で何ら進展がない以上米中関係が軋み出すのも当然で、トランプ大統領の中国への不満が高まっている。バカンス明けは米中貿易戦争の勃発の恐れもなきにしもあらず。中国を為替操作国へと名指しする大統領令はトランプ大統領のポケットの中にあるとも言われる。米中が対決色を強める可能性の高い秋の陣を前に夏のバカンスは体力温存に努めるのが良さそうだ

 

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金融政策も為替もアートだ

2017.06.29 21:19

かつて日銀の三重野総裁は「金融政策はアートだ」を口癖とし、金融政策が理論に加え職人芸の世界であることを強調していた。つまり金融政策はセントラルバンカーのプロフェッショナルの世界であると主張していたのであり、その点為替の世界と同様と言うことだろう。しかし目下の日銀では元財務官の黒田総裁が量的緩和という社会実験を強引に推し進めている。マイナス金利を進めて預金者および企業を苦しめ財政再建を優先するスタンスは財務省出身の人ならではとも映り、アートとは程遠い世界のように見受けられる。

 

現在の日本経済は息の長い景気回復が続いていると言われるが、コアインフレ率は相変わらずゼロ%近辺でデフレ脱却の兆しは見えない。一方賃金上昇が確認されない中で2%の物価目標にこだわり、年間80兆円のペースでの長期国債の買い入れを継続することの影響が懸念される。さらにREITやETFなどの購入により日銀の資産がGDPとほぼ同様の500兆円水準へと膨張し、日銀の財務内容が悪化しているのは明らかだ。このような環境下において先週末に日銀は金融政策決定会合を開いたが、現状の政策金利マイナス0.1%、長期金利0%の量的緩和政策に変更はなかった。とはいえその円安効果が年々薄れていることは明白で、4年にわたった「円安相場の終わり」が始まっているように感じるのは筆者ばかりではないだろう。

 

目を海外に転じれば、FRBはすでに金融正常化を進めており、さらにECBもその開始のタイミングを図っている。しかし日銀内部では出口戦略のシミュレーションを始めたようではあるが(実際出口戦略を行うと数兆円単位の赤字が顕現化すると見込まれている)、黒田総裁は出口戦略には全く積極姿勢を見せない。とはいえ変動相場制下における金融政策は、他国からの影響を排除して独立的に運営することが難しいのも事実であり、そろそろ「クロダノミクス」の看板をおろして金融政策の正常化を図る時期に来たのではないか。

 

米国ではトランプ政権におけるインフラ投資への期待がしぼみつつあり、短期金利が引き上げられても長期金利は2.1%台と上昇しない。つまり日米の金利差が縮小する可能性もなきにしもあらずで、中長期的には円高が招来される素地が整いつつあるとも言える。当面110円の攻防が続くにしてもその後は105円を超えて円が上昇するのではないか。これが「為替はアートだ」と考える筆者の目下の相場観だ。

 

 

 

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ネクスト経済研究所ブログ「風の便り」